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その言葉は「愛してる」
枝の束を頭から被ったような見た目。
木の体は動くとカサカサ音がする。
これが僕の友達。
普段は無口、でも実はおしゃべり!
スキンシップが好きだけど、枝が引っかかるから控えてる。
そんな君が好き。
君の国の言葉はよくわからない。
けど君が紡ぐ乾いた木の音色が心地いい。
最近、君がよく使う言葉を覚えてきた。
僕も同じ言葉を返したくて、覚えた言葉を一つ言ってみた。
しなやかな笛のような音。
君は、少し固まった。
指を僕の肩におそるおそる置く。
僕がじっとしていると、腰に手を回して抱きしめてくれた。
そうして同じ言葉を返してくれる。
僕も抱きしめ返した。
わかんないけど、ちょっとわかる。
これはきっと友達に言う最上位の褒め言葉だ!
木の体は動くとカサカサ音がする。
これが僕の友達。
普段は無口、でも実はおしゃべり!
スキンシップが好きだけど、枝が引っかかるから控えてる。
そんな君が好き。
君の国の言葉はよくわからない。
けど君が紡ぐ乾いた木の音色が心地いい。
最近、君がよく使う言葉を覚えてきた。
僕も同じ言葉を返したくて、覚えた言葉を一つ言ってみた。
しなやかな笛のような音。
君は、少し固まった。
指を僕の肩におそるおそる置く。
僕がじっとしていると、腰に手を回して抱きしめてくれた。
そうして同じ言葉を返してくれる。
僕も抱きしめ返した。
わかんないけど、ちょっとわかる。
これはきっと友達に言う最上位の褒め言葉だ!
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漫画未満漫画
日常系四コマ漫画よりつまらないのが俺。
一コマ一月でも内容が足りない。
ギャグ漫画からギャグをとった筋書。
自分の人生の主役は自分じゃない方が面白い。
だからって、俺のページに入ってくるな。
なんなんだお前。
一日一巻でも話が収まらない。
同じコマにいると作画密度が違いすぎる。
手を握んじゃねぇ、遠近法が死ぬ。
ほんと、止めろよ。
俺を人生の主役にするな。
お前の作画を俺に寄せるな。
お前の筋書を俺に寄せるな。
人生の主役を俺に譲るな。
俺が一番の読者だったんだよ。
一コマ一月でも内容が足りない。
ギャグ漫画からギャグをとった筋書。
自分の人生の主役は自分じゃない方が面白い。
だからって、俺のページに入ってくるな。
なんなんだお前。
一日一巻でも話が収まらない。
同じコマにいると作画密度が違いすぎる。
手を握んじゃねぇ、遠近法が死ぬ。
ほんと、止めろよ。
俺を人生の主役にするな。
お前の作画を俺に寄せるな。
お前の筋書を俺に寄せるな。
人生の主役を俺に譲るな。
俺が一番の読者だったんだよ。
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締め切りから飛び立つ
柵に足をかけて踏み込めば人は鳥になって飛んで行ける。
私がそう言うと、「そういうことを書けばいいんですよ」と返された。
真っ白の画面。
目をそらした先で窓の前を君が遮った。
「鳥にはさせませんよ」
朗らかな顔をして、見透かした目。
「私が鳥になったら君は困るだろうね」
「そしたら僕も鳥になります」
先生が小鳥なら、僕はタカかな、なんてニヤリ。
私は苦笑する。
鳥がダメなら飛行機になろうかな。
そしたら君は、何になるかな。
私がそう言うと、「そういうことを書けばいいんですよ」と返された。
真っ白の画面。
目をそらした先で窓の前を君が遮った。
「鳥にはさせませんよ」
朗らかな顔をして、見透かした目。
「私が鳥になったら君は困るだろうね」
「そしたら僕も鳥になります」
先生が小鳥なら、僕はタカかな、なんてニヤリ。
私は苦笑する。
鳥がダメなら飛行機になろうかな。
そしたら君は、何になるかな。
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星はそこにいる
夜空ひしめく星の中からただ一つ君を見つけられる。
何等星とか、距離とか、方角とか、あたしにはさっぱり。
君は素早く空を指し、星を教えてくれる。
あたしは本と空を交互に見て、目を細めて、首を傾げた。
それでもわかる。
あれは君の星。
君が一番好きだという星は、青白くて、小さくて、他と大して変わらない。
あたしは君が見上げる前にその星を指す。
そうするといつもの得意げな顔がはにかんで笑うんだ。
きっと君がどこにいたってわかるよ。
どこにだっている普通の星。
あたしだけの星。
何等星とか、距離とか、方角とか、あたしにはさっぱり。
君は素早く空を指し、星を教えてくれる。
あたしは本と空を交互に見て、目を細めて、首を傾げた。
それでもわかる。
あれは君の星。
君が一番好きだという星は、青白くて、小さくて、他と大して変わらない。
あたしは君が見上げる前にその星を指す。
そうするといつもの得意げな顔がはにかんで笑うんだ。
きっと君がどこにいたってわかるよ。
どこにだっている普通の星。
あたしだけの星。
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夢菓子箱制作依頼
君だけのお菓子箱を作る仕事なんだ。
バクのクッキー、海のソーダあめ、雲と宝石のスモア。
手のひらより少し大きい箱にお菓子を敷き詰める。
そうしたら、夢の中へ贈ってあげる。
「食べるのがもったいない」
それは褒め言葉だけど、お気持ちだけ。
どうぞ朝になる前に。
目が覚めるまでが消費期限。
夢のお菓子を召し上がれ。
バクのクッキー、海のソーダあめ、雲と宝石のスモア。
手のひらより少し大きい箱にお菓子を敷き詰める。
そうしたら、夢の中へ贈ってあげる。
「食べるのがもったいない」
それは褒め言葉だけど、お気持ちだけ。
どうぞ朝になる前に。
目が覚めるまでが消費期限。
夢のお菓子を召し上がれ。
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寝ることしかできない
起きなければいい。
それは今日が来なくなる方法。
一日が昼から、夜から始まれば、一日が朝から始まる世界にいなくて済む。
布団は棺桶。
この中で腐って死ぬのが、怖い。
朝が来るのも、怖い。
人より少し長く寝て、朝が来るのを遅らせる。
他にどうしたらよかったって言うんだ。
それは今日が来なくなる方法。
一日が昼から、夜から始まれば、一日が朝から始まる世界にいなくて済む。
布団は棺桶。
この中で腐って死ぬのが、怖い。
朝が来るのも、怖い。
人より少し長く寝て、朝が来るのを遅らせる。
他にどうしたらよかったって言うんだ。
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暑い春
アイスがおいしい春だ。
半袖のシャツが汗ばんでる。
あなたがくれた桜色のアイス。
一口食べれば、熱いからだに冷気が染みる。
ほのかに花の香り。
「みんなには内緒ね」
そう言ってあなたはアイスを一口。
幸せそうに笑う。
「来週は寒いって」
「変な春だね」
でも、こんな春も悪くないかも。
半袖のシャツが汗ばんでる。
あなたがくれた桜色のアイス。
一口食べれば、熱いからだに冷気が染みる。
ほのかに花の香り。
「みんなには内緒ね」
そう言ってあなたはアイスを一口。
幸せそうに笑う。
「来週は寒いって」
「変な春だね」
でも、こんな春も悪くないかも。
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やる気は来ない
真っ白な紙に点を入れることを怖がっている。
積み上がった作品を背にペンを握っている。
何が怖いんだろう。
何が怖いんだろう、から先へ進めない。
ペンを放り出すこともできず、後ろにも倒れ込めず、少し前屈みになってただじっとしている。
怪獣の足が僕を踏み潰してくれればいいのに。
押された衝撃でペンが届く気がするのに。
怪獣は来ない。
紙は真っ白なままだ。
積み上がった作品を背にペンを握っている。
何が怖いんだろう。
何が怖いんだろう、から先へ進めない。
ペンを放り出すこともできず、後ろにも倒れ込めず、少し前屈みになってただじっとしている。
怪獣の足が僕を踏み潰してくれればいいのに。
押された衝撃でペンが届く気がするのに。
怪獣は来ない。
紙は真っ白なままだ。
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花粉症はかわいくない
くしゃみだけで体の水分が抜けそうだ。
春なんて大嫌い。
君は「かわいいくしゃみだね」と笑う。
かわいいなんて言うな。
君もこの苦しみを味わえ!
呪いのパンチはくるっと回っていなされた。
「効かないね」ってニッとする。
緩い足取りでひょうひょうと去る。
行き場の無い手で顔を覆う。
くしゅん!
ああもう、春なんて大嫌い!
春なんて大嫌い。
君は「かわいいくしゃみだね」と笑う。
かわいいなんて言うな。
君もこの苦しみを味わえ!
呪いのパンチはくるっと回っていなされた。
「効かないね」ってニッとする。
緩い足取りでひょうひょうと去る。
行き場の無い手で顔を覆う。
くしゅん!
ああもう、春なんて大嫌い!
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山へ
絶壁の下を見下ろし、細い道を人がひしめき合う中、一握りの頂を目指す。
これを登山という。
ただ山を登るだけの何が楽しいのか。
ある人は「良い景色のため」と。
ある人は「達成感だ」と。
それならそれなりの塔をエレベーターで上がってそれなりのレポートでも書けばいい。
そう思いながら山を登る。
何度も何度も登る。
私は私が山に登る理由を知らない。
翌朝の筋肉痛にうなりながら、どうすればこんな痛い思いをせずに山を登れるのかを考えた。
これを登山という。
ただ山を登るだけの何が楽しいのか。
ある人は「良い景色のため」と。
ある人は「達成感だ」と。
それならそれなりの塔をエレベーターで上がってそれなりのレポートでも書けばいい。
そう思いながら山を登る。
何度も何度も登る。
私は私が山に登る理由を知らない。
翌朝の筋肉痛にうなりながら、どうすればこんな痛い思いをせずに山を登れるのかを考えた。