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喉を潰すような声でしか伝えられない言葉がある。
刺す、高音。
もはや聞き取れないなら歌詞カードをどうぞ。
でもきっとあなたは、声を聞く。
波長は雄弁。
高音をノイズでぐちゃぐちゃにして。
浅いというのは若さの特権。
未熟というのは自由の経験。
歌を聞け。
ボロボロの喉が心の代わりに叫んでいるから。

火照る恋夜に輝く一番星恋に恋する君は金星

幸せか汚れた体知らずして服のせいだと顔のせいだと

夏の店凍るクーラー上着着てできたてドリアコーヒーを添えて

地獄ってサウナよ。
もう拷問は時代じゃないの。
針を刺すなら針山より的確な急所。
一度刺したら抜けにくい場所。
いつか死ぬ、ゆるやかに死ぬ。
命にとって一番遅い後悔がある。
気がつかない方が幸せかしら。
人間界の夏とどっちが暑いかわからない地獄へようこそ。
燻製にしてもおいしくない貴方を歓迎するわ。

変わらない日常なんてこんなもの家庭の味とささやかなミス

家が好き旅の布団は船の上絨毯すらも家ではベッド

波音が窓の方から鳴っている波打ち際の重いと浅い

空白の時刻表を貰った。
電車に乗った時刻が記録される。
それもありかと思った。
天地逆に入ってきた電車は空を走る。
むらさきとみどりの空。
こんなところでも時間は24時間制なんだ。
車掌に聞くと「宇宙標準だからね」と言った。
子午線はどこにあるんだろう。
いつか探してみよう。
空白の時刻表を埋める旅。
次の駅まで一年。
食堂の味に飽きないといいな。

一度も聞いたことが無い子守歌を歌っている。
夢だった。
枕の側に座って頭をなでてくれる。
涙が止まらなくて眠れなかった。
早く寝なさい、と言う。
歌が終わってしまうじゃないか。
また歌うよ、と言う。
結局眠れないままに目が覚めてしまった。
寝ればよかった。
あなたの前で眠りたかった。
もう一度歌を聴きに行けばよかった。
ただ、まだ、泣いている。
起きることもできないまま眠ることもできなかった。