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星はそこにいる
夜空ひしめく星の中からただ一つ君を見つけられる。
何等星とか、距離とか、方角とか、あたしにはさっぱり。
君は素早く空を指し、星を教えてくれる。
あたしは本と空を交互に見て、目を細めて、首を傾げた。
それでもわかる。
あれは君の星。
君が一番好きだという星は、青白くて、小さくて、他と大して変わらない。
あたしは君が見上げる前にその星を指す。
そうするといつもの得意げな顔がはにかんで笑うんだ。
きっと君がどこにいたってわかるよ。
どこにだっている普通の星。
あたしだけの星。
何等星とか、距離とか、方角とか、あたしにはさっぱり。
君は素早く空を指し、星を教えてくれる。
あたしは本と空を交互に見て、目を細めて、首を傾げた。
それでもわかる。
あれは君の星。
君が一番好きだという星は、青白くて、小さくて、他と大して変わらない。
あたしは君が見上げる前にその星を指す。
そうするといつもの得意げな顔がはにかんで笑うんだ。
きっと君がどこにいたってわかるよ。
どこにだっている普通の星。
あたしだけの星。
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夢菓子箱制作依頼
君だけのお菓子箱を作る仕事なんだ。
バクのクッキー、海のソーダあめ、雲と宝石のスモア。
手のひらより少し大きい箱にお菓子を敷き詰める。
そうしたら、夢の中へ贈ってあげる。
「食べるのがもったいない」
それは褒め言葉だけど、お気持ちだけ。
どうぞ朝になる前に。
目が覚めるまでが消費期限。
夢のお菓子を召し上がれ。
バクのクッキー、海のソーダあめ、雲と宝石のスモア。
手のひらより少し大きい箱にお菓子を敷き詰める。
そうしたら、夢の中へ贈ってあげる。
「食べるのがもったいない」
それは褒め言葉だけど、お気持ちだけ。
どうぞ朝になる前に。
目が覚めるまでが消費期限。
夢のお菓子を召し上がれ。
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寝ることしかできない
起きなければいい。
それは今日が来なくなる方法。
一日が昼から、夜から始まれば、一日が朝から始まる世界にいなくて済む。
布団は棺桶。
この中で腐って死ぬのが、怖い。
朝が来るのも、怖い。
人より少し長く寝て、朝が来るのを遅らせる。
他にどうしたらよかったって言うんだ。
それは今日が来なくなる方法。
一日が昼から、夜から始まれば、一日が朝から始まる世界にいなくて済む。
布団は棺桶。
この中で腐って死ぬのが、怖い。
朝が来るのも、怖い。
人より少し長く寝て、朝が来るのを遅らせる。
他にどうしたらよかったって言うんだ。
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暑い春
アイスがおいしい春だ。
半袖のシャツが汗ばんでる。
あなたがくれた桜色のアイス。
一口食べれば、熱いからだに冷気が染みる。
ほのかに花の香り。
「みんなには内緒ね」
そう言ってあなたはアイスを一口。
幸せそうに笑う。
「来週は寒いって」
「変な春だね」
でも、こんな春も悪くないかも。
半袖のシャツが汗ばんでる。
あなたがくれた桜色のアイス。
一口食べれば、熱いからだに冷気が染みる。
ほのかに花の香り。
「みんなには内緒ね」
そう言ってあなたはアイスを一口。
幸せそうに笑う。
「来週は寒いって」
「変な春だね」
でも、こんな春も悪くないかも。
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やる気は来ない
真っ白な紙に点を入れることを怖がっている。
積み上がった作品を背にペンを握っている。
何が怖いんだろう。
何が怖いんだろう、から先へ進めない。
ペンを放り出すこともできず、後ろにも倒れ込めず、少し前屈みになってただじっとしている。
怪獣の足が僕を踏み潰してくれればいいのに。
押された衝撃でペンが届く気がするのに。
怪獣は来ない。
紙は真っ白なままだ。
積み上がった作品を背にペンを握っている。
何が怖いんだろう。
何が怖いんだろう、から先へ進めない。
ペンを放り出すこともできず、後ろにも倒れ込めず、少し前屈みになってただじっとしている。
怪獣の足が僕を踏み潰してくれればいいのに。
押された衝撃でペンが届く気がするのに。
怪獣は来ない。
紙は真っ白なままだ。
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花粉症はかわいくない
くしゃみだけで体の水分が抜けそうだ。
春なんて大嫌い。
君は「かわいいくしゃみだね」と笑う。
かわいいなんて言うな。
君もこの苦しみを味わえ!
呪いのパンチはくるっと回っていなされた。
「効かないね」ってニッとする。
緩い足取りでひょうひょうと去る。
行き場の無い手で顔を覆う。
くしゅん!
ああもう、春なんて大嫌い!
春なんて大嫌い。
君は「かわいいくしゃみだね」と笑う。
かわいいなんて言うな。
君もこの苦しみを味わえ!
呪いのパンチはくるっと回っていなされた。
「効かないね」ってニッとする。
緩い足取りでひょうひょうと去る。
行き場の無い手で顔を覆う。
くしゅん!
ああもう、春なんて大嫌い!
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山へ
絶壁の下を見下ろし、細い道を人がひしめき合う中、一握りの頂を目指す。
これを登山という。
ただ山を登るだけの何が楽しいのか。
ある人は「良い景色のため」と。
ある人は「達成感だ」と。
それならそれなりの塔をエレベーターで上がってそれなりのレポートでも書けばいい。
そう思いながら山を登る。
何度も何度も登る。
私は私が山に登る理由を知らない。
翌朝の筋肉痛にうなりながら、どうすればこんな痛い思いをせずに山を登れるのかを考えた。
これを登山という。
ただ山を登るだけの何が楽しいのか。
ある人は「良い景色のため」と。
ある人は「達成感だ」と。
それならそれなりの塔をエレベーターで上がってそれなりのレポートでも書けばいい。
そう思いながら山を登る。
何度も何度も登る。
私は私が山に登る理由を知らない。
翌朝の筋肉痛にうなりながら、どうすればこんな痛い思いをせずに山を登れるのかを考えた。
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まっしろカレンダー
カレンダーに誕生日を書かなくなったのはいつからだったか。
誰も自分の誕生日を書いてはくれない。
カレンダーアプリだけが仕事をする。
年をとるだけの日の何がうれしいんだ。
なんて負け惜しみです。
私が今日まで生きていたことを祝ってくれる人。
私がその日まで生きていることを楽しみにしてくれる人。
どこにいますか。
あなたの誕生日、書かせてください。
誰も自分の誕生日を書いてはくれない。
カレンダーアプリだけが仕事をする。
年をとるだけの日の何がうれしいんだ。
なんて負け惜しみです。
私が今日まで生きていたことを祝ってくれる人。
私がその日まで生きていることを楽しみにしてくれる人。
どこにいますか。
あなたの誕生日、書かせてください。
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私は人形
人形がしゃべったらうれしいって人ばかりじゃない。
フランス人形が関西弁だったら?
ふわふわのくまが毒舌だったら?
あなたはうれしくない側の人。
あなたの言葉に縛られていた。
あなた好みの服には「似合うね」
あなた好みの仕草は「かわいいね」
だから少しいじわるを言ったの。
あなたは困った顔をした。
ただよくわからないという顔だった。
あなたは優しい人。
優しくてひどい人。
私は人形でいたくない。
だけど、そんな顔をしてほしかったんじゃない。
Not everyone would be happy if a doll talked.
What if the French doll spoke with a Southern drawl?
What if the fluffy bear were sharp-tongued?
You belong to those who find no joy in it.
I was trapped by the echo of your words.
When I wore the clothes you liked, you said, "They suit you."
When I made the gestures you favored, you said, "You're cute."
So, I uttered a few mean words.
You wore a troubled expression—a look that said you were utterly perplexed.
You are kind, yet cruel.
I don't want to remain merely a doll.
But I don't want you to make that face.
如果娃娃会说话,并不是所有人都会因此感到高兴。
如果法国娃娃带着四川口音说话,会怎样?
如果那只毛茸茸的熊满口毒舌,会怎样?
你本来就属于那些对此毫无快乐可言的人。
我曾被你话语的回响所束缚。
当我穿上你喜欢的衣服时,你说:“真适合你。”
当我做出你钟爱的姿态时,你说:“好可爱。”
于是,我说了几句刻薄的话。
你露出了困惑的表情——那表情仿佛在诉说着你完全不解。
你既温柔可是残酷。
我不想仅仅做一个玩偶。
但我不希望看到你那样的表情。
인형이 말한다고 해서 모두가 기뻐하는 건 아니다.
프랑스 인형이 동남 방언으로 말한다면 어떨까?
푹신한 곰이 독설을 날린다면 어떨까?
당신은 그런 것에서 기쁨을 느끼지 못하는 사람이다.
나는 당신 말의 잔향에 얽매여 있었다.
당신이 좋아하는 옷을 내가 입으면, “정말 잘 어울리네.”라고 말하곤 했다.
내가 당신이 좋아하는 몸짓을 할 때면, “너무 귀여워.”라고 하곤 했다.
그래서 나는 몇 마디 못된 말을 내뱉었다.
당신은 고민에 빠진 듯한 표정을 지었는데, 그 표정은 완전히 어리둥절하다는 것을 말해주었다.
당신은 다정하지만 잔인한 사람이다.
나는 단지 인형으로만 남고 싶지 않다.
하지만 나는 당신이 그런 표정을 짓는 걸 바라지 않는다.
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フランス人形が関西弁だったら?
ふわふわのくまが毒舌だったら?
あなたはうれしくない側の人。
あなたの言葉に縛られていた。
あなた好みの服には「似合うね」
あなた好みの仕草は「かわいいね」
だから少しいじわるを言ったの。
あなたは困った顔をした。
ただよくわからないという顔だった。
あなたは優しい人。
優しくてひどい人。
私は人形でいたくない。
だけど、そんな顔をしてほしかったんじゃない。
Not everyone would be happy if a doll talked.
What if the French doll spoke with a Southern drawl?
What if the fluffy bear were sharp-tongued?
You belong to those who find no joy in it.
I was trapped by the echo of your words.
When I wore the clothes you liked, you said, "They suit you."
When I made the gestures you favored, you said, "You're cute."
So, I uttered a few mean words.
You wore a troubled expression—a look that said you were utterly perplexed.
You are kind, yet cruel.
I don't want to remain merely a doll.
But I don't want you to make that face.
如果娃娃会说话,并不是所有人都会因此感到高兴。
如果法国娃娃带着四川口音说话,会怎样?
如果那只毛茸茸的熊满口毒舌,会怎样?
你本来就属于那些对此毫无快乐可言的人。
我曾被你话语的回响所束缚。
当我穿上你喜欢的衣服时,你说:“真适合你。”
当我做出你钟爱的姿态时,你说:“好可爱。”
于是,我说了几句刻薄的话。
你露出了困惑的表情——那表情仿佛在诉说着你完全不解。
你既温柔可是残酷。
我不想仅仅做一个玩偶。
但我不希望看到你那样的表情。
인형이 말한다고 해서 모두가 기뻐하는 건 아니다.
프랑스 인형이 동남 방언으로 말한다면 어떨까?
푹신한 곰이 독설을 날린다면 어떨까?
당신은 그런 것에서 기쁨을 느끼지 못하는 사람이다.
나는 당신 말의 잔향에 얽매여 있었다.
당신이 좋아하는 옷을 내가 입으면, “정말 잘 어울리네.”라고 말하곤 했다.
내가 당신이 좋아하는 몸짓을 할 때면, “너무 귀여워.”라고 하곤 했다.
그래서 나는 몇 마디 못된 말을 내뱉었다.
당신은 고민에 빠진 듯한 표정을 지었는데, 그 표정은 완전히 어리둥절하다는 것을 말해주었다.
당신은 다정하지만 잔인한 사람이다.
나는 단지 인형으로만 남고 싶지 않다.
하지만 나는 당신이 그런 표정을 짓는 걸 바라지 않는다.
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紅茶の思い出
紅茶って味の薄い麦茶だと思った。
口に含んだ私が微妙な顔をする。
あなたは「香りを楽しむものよ」と笑う。
あなたの家にはいつも紅茶があった。
棚にそろえられた茶葉。
レースのドレスのような茶器。
蓋を開ければ紅色の水鏡。
今では私の家が茶葉の国。
初めて飲んだ君は微妙な顔をした。
だから、「香りを楽しむものよ」って笑ったの。
I once thought black tea was just a weaker barley tea.
I took a sip and made a wry face.
You laughed and said, "It's the aroma you should savor."
There was always black tea in your home.
Tea leaves neatly lined upon the shelves,
Teaware delicate as lace dresses.
Lifting the lid revealed a crimson mirror.
Now, my home has become a land of tea leaves.
When you first took a sip, you made a wry face.
So I laughed and said, "It's the aroma you should savor."
我曾以为红茶只是味道淡的大麦茶。
我抿了一口,皱起眉头。
你笑着说:“红茶是用来品味香气的。”
你家里总是有红茶,
茶叶整齐地排列在架子上,
茶具精致得如同蕾丝裙。
掀开茶盖,映出一面深红色的水镜。
如今,我的家成了茶叶的国度。
你第一次喝时,也皱起眉头。
于是我笑着说:“红茶是用来品味香气的。”
처는 한때 홍차가 연한 보리차라고 생각했다.
처는 한 모금 마시고 묘한 표정을 지었다.
너는 웃으며 말했다. "그것은 향을 즐기는 차야."
너의 집에는 언제나 홍차가 있었다.
선반에 가지런히 놓인 찻잎,
레이스 드레스처럼 섬세한 찻잔.
뚜껑을 열면 붉은 물거울이 비친다.
이제 내 집이 차잎의 나라가 되었다.
처음으로 마신 너는 묘한 표정을 지었다.
그래서 처는 웃으며 말했다. "그것은 향을 즐기는 차야."
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口に含んだ私が微妙な顔をする。
あなたは「香りを楽しむものよ」と笑う。
あなたの家にはいつも紅茶があった。
棚にそろえられた茶葉。
レースのドレスのような茶器。
蓋を開ければ紅色の水鏡。
今では私の家が茶葉の国。
初めて飲んだ君は微妙な顔をした。
だから、「香りを楽しむものよ」って笑ったの。
I once thought black tea was just a weaker barley tea.
I took a sip and made a wry face.
You laughed and said, "It's the aroma you should savor."
There was always black tea in your home.
Tea leaves neatly lined upon the shelves,
Teaware delicate as lace dresses.
Lifting the lid revealed a crimson mirror.
Now, my home has become a land of tea leaves.
When you first took a sip, you made a wry face.
So I laughed and said, "It's the aroma you should savor."
我曾以为红茶只是味道淡的大麦茶。
我抿了一口,皱起眉头。
你笑着说:“红茶是用来品味香气的。”
你家里总是有红茶,
茶叶整齐地排列在架子上,
茶具精致得如同蕾丝裙。
掀开茶盖,映出一面深红色的水镜。
如今,我的家成了茶叶的国度。
你第一次喝时,也皱起眉头。
于是我笑着说:“红茶是用来品味香气的。”
처는 한때 홍차가 연한 보리차라고 생각했다.
처는 한 모금 마시고 묘한 표정을 지었다.
너는 웃으며 말했다. "그것은 향을 즐기는 차야."
너의 집에는 언제나 홍차가 있었다.
선반에 가지런히 놓인 찻잎,
레이스 드레스처럼 섬세한 찻잔.
뚜껑을 열면 붉은 물거울이 비친다.
이제 내 집이 차잎의 나라가 되었다.
처음으로 마신 너는 묘한 표정을 지었다.
그래서 처는 웃으며 말했다. "그것은 향을 즐기는 차야."
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