abhyAsaH

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ひさしぶり、さようなら

君はきれいになったね。
隣を歩きたくない。
ひさしぶり、じゃない。
はじめましてだ。
ふとした仕草。
少し悪い手癖。
どうして君がするの。
きっと君はずっと美しい。
いつか美しくなるよう生まれた人。
私だけが変わらない。
さようなら、またね。
さようなら。
私は言い切った。
さらば、美しい人。
別人と思えば、楽しかったよ。
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太陽にとかされて

冷たい体に熱が当たる。
肌から温度が染み込む。
ベランダにくっきり落ちる影。
影と光で空気が変わる。
外の世界に出たんだ、と思う。
おれは内の世界が好き。
でもたまに、閉じこもりすぎてしまう。
そういうとき、外に出る。
家の外ではないけれど。
冷たくて硬い体を、太陽は柔らかくとかしていく。
だからおれは太陽が好き。
夏はちょっと強すぎるけどね。
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名前の無いニュース

うちはニュースを点けない。
本当はテレビも無い方がいい。
火種になるから。
誰が殺したとか、誰のいざこざとか。
名前のあるニュースたち。
あの人のかんしゃく、二人の罵り合い。
名前の無いニュースなんか誰も興味無い。
またあの人がテレビを点けた。
怒るなら止めたらいいのに。
名前を付けませんか。
題名は「馬鹿、治らない」。
そうしたら、どこかの家で名前の無いニュースが生まれる。
なら無い方がいいか。
恨むならあの人、その上で。
伝える側は立派でいいですね。
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心躍り

落ち込んでいるから踊る。
腕を振って、足を上げて。
突き上げた腕に心がついて行くよ。
立ち上がれない日もある。
体が重いよね。
なら腕だけで踊ろう。
動けない日もある。
心が重いよね。
それなら心の腕を小さく揺らそう。
自分だけじゃ無理な日もある。
自分って弱いよね。
だから私が手を引くよ。
踊ろう。
元気になっても、ならなくても。
あなたの心が少しだけ上を向けるように。
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誰かの祭り、俺の祭り

窓の外から花火の音。
そうか、祭りか。
飲みかけのビール片手に窓を開ける。
狭いなあ。
ただでさえ狭い窓。
でかい花火も半分は家の影。
光ったんだろう、と思うと、ドン。
パチパチ、に耳をすませる。
ぬるい空気にビールを一口。
あそこへ行く気は無い。
気力も無い。
でも、いいな、と思う。
浴衣を着ていた頃の自分と今を重ねた。
また誰か、花火を上げてくれ。
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あやしいメール

こんにちは!
これは未来のメールです
見えますか
あなたが好きです
お友だちになりましょう!
!<-かわいい
助けて
読んでくれてありがとう!
お幸せに!
未来より
(迷惑メールフォルダのメールは三十日ごとに削除されます)
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ショッピングモールに憧れて

ショッピングモールは特別な場所だった。
開けた田舎から一時間以上。
都会って家が並んでるだけで都会。
狭いところにぎゅっと物が詰まっている。
それがむしろ、世界の広さを感じた。
昼より明るい照明が足取りを軽くする。
まるでお姫様の私。
フードコートのワンプレートはチェーンだけど。
専門店は縮小版だけど。
今でも私の特別な場所。
ショッピングモール。
狭くて広い、身近な非日常。
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休日のベッド

手を伸ばせばすべてがある。
私のベッド。
八割のことはスマホでいい。
スマホで無理なら机の上。
ティッシュ、スナック、カップにポット。
インターホンは無視。
好きに寝て好きに起きる。
これこそ至高の休日。
たまのストレッチで罪悪感はパス。
あとはトイレだけ。
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胸痛って言い方は真面目すぎるよ

病気と病気じゃないの間。
ちょっと「じゃない」寄り。
君に胸が痛む。
青春ってかわいいね。
ご飯が喉を通らない。
ちょっと痩せた。
学校を休んだ。
起きる気になれない。
ちょっとだけ、病気。
本当にちょっとだけ。
でも、恋の病に死者がいるなら私。
死因は「社会に絶望」にします。
君のせいじゃないです。
全部私のせいです。
胸が痛んだ。
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無駄の人生

白い部屋に机と布団。
これだけあれば十分。
持てるものだけ持つ。
使うものだけ持つ。
物も人も同じ。
シンプルな話だ。
僕から見れば、君は無駄ばかり。
部屋の限界まで飾り付ける。
思い出せない思い出の品。
無限に増える交友関係。
でも、君は楽しそうだ。
つきつめれば人生は無駄だ。
だから人それぞれに無駄の集め方がある。
僕はこの手に持てるだけ。
君は愛したいだけすべて。
素敵な無駄の人生をしよう。
ただ、部屋は片付けた方がいいよ。