abhyAsaH

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文字の美学

一文字を削るためだけ一時間落ちた画鋲は踏む前に取る
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短命

走り抜く脇目も振らず死ぬまでは花火咲かせる死ぬ間際には
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昼の灼熱

影強し見守る君に汗光るラムネを開けて夕暮れを待つ
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全知より遠い僕

全て知るわけではないが僕の庭知識の庭が花束がある
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信頼

信じると言うならばこそ閉ざす口
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なぐさめ

私のための言葉は私が言ってあげないといけないよ。
ほんとだよ。
あの歌が、詩が、漫画が。
そう、反証だ。
だけどその言葉を使うのは私だ。
生きたいのならわらを掴みなさい。
死にたいのならわらを離しなさい。
どちらかわかないなら掴まれなさい。
握り返す権利と責任は私に委ねられている。
だからこそ、私のための言葉を私は言ってあげられる。
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恋愛完全マニュアル改訂最新版(2)

お互い手探りの恋をする。
駆け引きの正反対。
好きなのはわかるのに恋の作法はわからない。
共同執筆のマニュアル。
思いは形で示す。
ときには触れて思い出を。
嫉妬、欲望、高揚。
初めての感情に名前を付ける。
普通とは違う恋の形。
私たちだけのマニュアルにしましょう。
それがきっと愛だから。
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蝶食い

君は蝶が好き、食べ物として。
禁忌だという。
グロテスクは君にとって問題じゃない。
蝶は魂だ。
あの世にいた誰かだ。
蛇がそそのかすほど美味だそうだ。
細い指に蝶が止まる。
君の周りだけ重力が無い。
蝶に優しくキスをして、蝶から口へ入っていった。
喉鳴り。
気持ちはわかる。
食べたい、食べられたい。
わかってしまったらおしまいだ。
最初に感じた気持ち悪さに思いをはせていた。
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穴迷路

終わりの無い穴を掘っている。
地面は穴だらけ。
岩にあたって終わったものもあれば。
伸びた先で他と繋がったものもある。
あちらを掘ってはこちらを掘って。
あの穴を進んでこの穴を通って。
地上はもうわからないが地図も無い。
ある日、ふと、大きな道に出る。
穴が集まって一つになった空間。
そこからずうっと下へ掘っていく。
底が抜けた。
踏み入れた先は空。
空に落ちて、風を切る。
ようやく迷路の終わりを知る。
着地し、スコップを手にした。
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顔と心が別人の人

自分の顔がわからなくなる。
わたしの顔に見えなくなる。
あるときは絶世の美女。
または史上最低のブス。
心と体が別人だ。
体の外側で考えている自分がいる。
頬をつねって痛むことが救い。
この痛みすら外側に行ったとき。
自分の足が並行でなくなったとき。
外側の心すら私ではなくなる。
心はまだ痛いか。