推し香水購入備忘録
概要
先日、いわゆる推し香水というものを購入しました。
推し香水とは、ざっくり言うと好きな人物・キャラクターなどのイメージに合う香水のことです。
個人的な記録と、これから推し香水を購入される方の参考資料として、また一つの読み物として、備忘録を記します。
前置き
本備忘録は以下のような構成です。
- 購入まで
- オーダーシート記入
- 香水感想
香水・推し香水に詳しい方には冗長な説明があります。
適宜不要部分を読み飛ばしていただけると幸いです。
また私は香水初心者のため、香水に関する説明に不備がある可能性があります。ご了承ください。
本備忘録には拙作ゲーム『となりのクラスの知らないあの子は天使になったんだ』(以下略称とな天)のネタバレが含まれています。なるべく配慮いたしますが、未プレイの方はご注意ください。
購入まで
購入動機
友人が自創作キャラクターの推し香水を購入し楽しんでいるのを見て、自分も購入してみたいと思ったのが購入のきっかけです。
自創作キャラクターのグッズが欲しかったというのもあります。
グッズの中でも香水を選んだのは、香水という手法でキャラクターの存在を感じることに興味があったためです。
また以前から香水に興味があり、推し香水を機会に使ってみることにしました。
購入店選び
購入方法分類
推し香水の購入方法は色々あります。
代表的な例は以下の通りです。
- 自分で推しに似合う香水を購入する・制作する
- 公式で販売されている推し香水を購入する
- 購入者のイメージ(ここでは推し)に合う香水を既存の香水(自社開発含む)から選んでくれるサービスで購入する
今回は三つ目のサービスを利用し推し香水を購入しました。
私は香水初心者のため香水選びは不得手ですし、欲しい香水は自創作キャラクターの香水なので私が公式です。
必然的に三つ目の選択肢を選ぶことになりました。
ここではこの三つ目のサービスのことを便宜上、推し香水販売サービスと呼びます。
購入店選択理由
推し香水販売サービスは種々様々ありますが、今回は「Scently」というサービスを利用しました。
選択理由は以下の通りです。
- 友人が利用していたサービスだったため安心感があった
- SNSで他の購入者の感想に惹かれた
- 設問傾向が今回の購入趣旨・私の創作傾向と合っていた
- 設問傾向が丁寧で好感が持てた
- ネット購入ができた
推し香水販売サービスでは多くの場合、どんな香りを希望するかをオーダーシートに記入します。
端的に言えば推しについて説明します。
私が調べた推し香水販売サービスでは、オーダーシートに「推し自身の好み」を説明する欄が多いように感じました。
今回は香水に推しの性格・推しの解釈を反映してほしかったため、推しの性格・背景情報の設問があるScentlyを選択しました。
またScentlyのオーダーシートは設問が細かく、サブカルチャー向けに設定されていたことも好印象でした。
例えば推しの性別に関する設問では、男女の他、人外やその他も選ぶことができます。
推しのイメージカラーに関する設問があったり、推しの誕生日の設問で「わからない」が選択肢にあったりします。サブカルチャー特有の文化に理解があるので、オーダーシートに記入した推し解釈もきっと丁寧に汲んでくれるだろうと感じました。
推し香水販売サービスのオーダーシートには、推しについて説明する欄が一つ用意されている簡潔なものもあります。
それはそれで潔く、また自分の思ったとおりに推しを語ることができます。
ただ今回は「どのような記述が香りに影響を与えるか知りたかった」こと、「このように記述すれば香りに反映すると丁寧に設問を用意してくれる親切さへの好印象」があり、Scentlyのオーダーシートを魅力的に感じました。
一番嬉しかったのは、世界観や推しの背景情報を記入する設問と、性格を第一印象と内面に秘めた印象で記入する設問があったことです。
私は創作において、世界観・キャラクター背景設定・性格のギャップと葛藤を重視しているので、まさに私向けのオーダーシートだと感じました。
Scentlyはネットで購入できるのも魅力的でした。
対面カウンセリングで推しを説明し香水をオーダーするサービスもありましたが、対面で推し語りをすることには抵抗がありました。
また直接販売店に赴きカウンセリング・購入するサービスも、ネット購入と比べ相対的に敷居高く感じました。
以上の理由から、今回はScentlyで推し香水を購入することにしました。
推し自身の好みを反映した香水や、とにかく好きなだけ語った推し語りを反映した香水などにも興味があります。機会があれば他の香水販売サービスも試したいです。
推し選択理由
推しおよび好きなキャラクター・人物はたくさんいますが、今回は自創作キャラクターである「黒井弥吉」を選びました。
黒井弥吉はとな天のメインキャラの一人です。
選んだ理由は「一番オーダーシートが書きやすそうだったから」です。
前提として、私は自創作キャラクター全てを「自分の推しになるように」造形しています。とにかく自分の好きな属性を詰め込みます。モブですら何かしら推しポイントがあります。
とな天には五人のメインキャラがいます。主人公もいます。全員推しです。
五人それぞれ愛の方向性は違いますが、愛の量に差はありません。
その上で黒井を選んだのは、愛の量ではなく、説明の書きやすさが理由です。
一番手癖で作ったキャラなので、一番上手く説明できると思いました。
主人公である九十九も手癖キャラなのですが、こちらは香りのイメージが全く湧かなかったので今回は見送りました(黒井はなんとなく爽やかな香りのイメージがありました)。
個人的に、香りのイメージが湧くキャラクターの方が、推し香水と相性が良さそうな印象があったためです。
黒井と比べて内面と設定が複雑で、少し説明しづらそうだったのも選択を見送った理由の一つです。
オーダーシート記入
Scentlyのオーダーシートは以下リンクからご確認ください。
以下補足事項がある設問について説明します。
注意点
オーダーシートに記入した具体的な文章などを掲載しております。以下の内容を不用意に転用することが、著作権法やScently利用規約などに抵触しないことを私は保証できません。
もし黒井弥吉・とな天キャラクターの香水が欲しいという方がいらっしゃれば、ご自身にとっての魅力を存分に記述してください。その際当オーダーシートに含まれる情報を参考にしていただいても構いません。
また『甘翼』製ゲーム利用規約もご確認ください。
普段使いかどうか
キャラクターの解釈を優先してほしかったため「キャラの概念を優先したい」を選択しました。
普段香水を使わない(普段使いする予定も無い)ので、普段使いで注文しても宝の持ち腐れになるというのも選択理由の一つです。
イメージカラー
髪色(白・黒)、瞳の色をカラーコードで指定しました。
カラーコードで指定できるのが嬉しいです。例えば一口に白といっても真っ白からグレーっぽいもの、色味のついたものまで色々あるので、イメージを直接伝えられるのは便利です。
大人っぽさ・セクシーさ
少し悩みました。外見は大人っぽく、大柄・筋肉質で顔立ちもいいのはセクシーと言えると思います。
ただ性格が子どもっぽいので、低い方を選ぶべきかな?とも思いました。
最終的に外見のイメージを優先し、高めに設定しました。
世界観・背景情報
世界観・背景情報についてのオーダーシート記述(一部抜粋)
天使という概念が存在する現代日本。ある日突然、人間は天使になり、天使になった人間は不可解な呪文を唱える。その呪文を聞いた人間(呪文を唱えた天使も含む)は、背中から大量の腕が生え死ぬ。腕が生え死んだ人間のことも天使と呼ぶ。呪文を唱えるのは人間でもよい。天使は「人は死ぬことが善」という価値観を持つ。
推しの父は代々続く会社の社長。精神病を患っていたが病を周囲に隠していた。推しに対し常に完璧を求め、虐待していた(娯楽の制限、非現実的な家庭内ルールの強制、価値観や成果の否定など)。
推しには幼なじみが三人いる(A、B、Cとする)。Aは生きている天使、Bは政府秘密組織リーダーと参謀の息子、Cは父親に虐待されているクラスメイト。推しとAとCは同い年。Bは三歳上。
推しは小学六年生のとき父親を天使にして殺害した。中学一年生のときCが両親を天使にして殺害し、推しはCの両親の死体を埋める手伝いをした。それをネタに推しはCを脅し、自身に服従する契約を取り交わした。
推しが中学二年生のとき、推しとCはある事件を起こした。それにより天使は人類の崇拝対象になり、天使化は望ましいことになった。
推し(とC)の目的は人類滅亡。人類全員を天使にすることを目論んでいる。
推しは高校二年生、生徒会長。身長183cm。がたいがいい、握力が強い。左利き、垂れ目、左目に泣きぼくろ。物語の主人公はAで推しは黒幕。推しはAに天使として他者を殺させようとしている。Aは誰も殺したくない。
この後にある性格の記述でもそうなのですが、規定文字数に収めるのが大変でした。
世界観・背景情報と性格の設問は文字数が30~999文字に制限されています。とりあえず最低限黒井がどういう人生を歩んで今の性格が形成されたか理解できる程度のことを書きました(性格説明も含めほぼ上限まで文字数を使いました……)。
推し香水、とりわけScentlyのオーダーシートが各所で「怪文書」と表現される理由がよくわかります。自分の書く推し語りほど奇怪なものはありません。そしてこの複雑かつ暗い物語設定を調香師さんに見せると思うと、オーダーシートを送るのにかなり躊躇しました。結局推し香水が欲しいという欲求に抗えなかったのですが。
オーダーシートでは黒井のことを「推し」、他キャラクターをアルファベットで表記しています。
とな天は私が著作権を有しているのでキャラクター名を書いてもおそらく問題ありません。しかしScently側から見れば誰が著作権を有している作品かわからないと思ったので、このような表記にしました。
今思えば黒井もアルファベット表記でよかったです(文字数削減も兼ねて)。
文章中、黒井他三人の間柄を幼なじみと表現していますが、公式的に幼なじみなのは利田金星・令城談だけです。今回は端的さを重視してこの表記にしました。
回答の構成は概ね以下の通りです。
- 基本的な世界観説明
- 出自
- 黒井に起きた出来事(時系列順)
- 現在の様子
- 容姿
前述の通り、黒井の人格形成の背景理解に必要な情報を選んで記述しました。
具体的には、天使の存在、能力の存在、父との関係性、紆余曲折の人生、行動の犯罪性、現在の目的、他キャラクターとの関係性です。
容姿情報はいるかな?と疑問に思いましたが、私は黒井の見た目も好きなので盛り込みました。
第一印象と内面に秘めた性格
性格についてのオーダーシート記述
第一印象は「誠実・知的・寛容・穏和・親身」。笑顔を絶やさず、周囲をよく見ていて、困っている人は率先して助け、何事も完璧にこなし、それでいて謙遜家。模範的優等生。自立していて、実年齢より達観している。誰とでもすぐ仲良くなり、いつも人の輪の中心。人類や世界の幸せを望み、人の善性を信じている。公明正大が信条。計画性ある物事が好き。
自覚的に隠している特性は「反道徳的価値観・反道徳的合理性・人類への憎悪・冷徹・利己主義」。人類は全員犯罪者で滅亡するべきと思っている。反出生主義。自己利益のために誰かが不利益を被ってもいい。利益があるなら犯罪行為も厭わないが、証拠は巧妙に隠す。逆に自己不利益は許せず報復精神が強い。思い通りにならないと不機嫌になる。支配欲が強い。自分より幸せな人間が許せない。固定観念に囚われやすい。
無自覚的に隠している特性は「自己肯定感の欠如・希死念慮・愛への執着・愛情深さ・平穏への憧れ」。自分が今までした失敗は全て、失敗した場所と時間まで覚えている。自分は間違った人間という意識が強い。愛されていない、愛される理由が無いと思っている。愛されたがりだが愛を信じられない。利害関係や背徳的な関係に安心する。周囲の顔色ならぬ感情色を常にうかがっている。本当は死んで安息を得たいと思っているが、父に希死念慮を否定されているため、死ねないでいる。何も事件が起こらない、天使も存在しない、平和な世界で暮らすことを無意識に望んでいる。
幼なじみである三人だけが本当の友人だと思っている。この三人には本心を見せることがある。この三人が不幸になれば苦しくなるし、不幸にしているのが自分であればもっと苦しくなる。しかし三人それぞれに許せない部分があり、傷つけてしまう。でもそういう自分を理解して受け入れてほしいと思っている。
各幼なじみからの印象(幼なじみはA、B、Cとする)
A:とても人を傷つける愛し方をする人、それでも他者を深く愛している人
B:理解できない人、理解したい人、大嘘吐き
C:自分と似ていて嫌になる人、唯一本心を理解し合える人推しから見た各幼なじみの許せない部分
A:博愛主義と不殺主義を宣うこと
B:平気で間違った言動をすること
C:自分と似ているところ弱点が無いように見えるが、本当は虫が苦手。理由は「感情が見えないから」。虫と遭遇するとにらみ合ったまま一時間経過する。
黒井は良く言えば豊かな人間性があり、悪く言えばわかりにくくて面倒くさいです。
どうすればわかりやすく説明できるか考えた結果、以下の構成で記述することにしました。
- 第一印象、自覚的に隠している内面、無自覚的に隠している内面に分けて記述する
- 各印象・内面の説明には代表的な特性を列挙する。その後、補足的な説明をする
- 黒井と他キャラクターの関係性を説明する
本来性格の説明だけなら関係性の説明は不要です。ですが黒井の性格形成には友人との関係性が大きく関わっており、黒井の魅力の一つでもあるため、記述しました。
私は注文後に知りましたが、Scently公式サイトにオーダーシートの書き方を解説したページがありました(メニュー一覧に無いので気がつきませんでした)。
公式からの解説なので、わかりやすく的確です。
イメージしたい香りの希望
香水初心者であること、調香師さんの解釈で香りを選んでほしいことから、香りについてはお任せすると記述しました。
ただ二点、要望を記述しました。
- コーヒーを想起させる香りがあったら嬉しい
- イメージが必要ならこのイメージに沿った香りで作ってほしい
コーヒーは黒井の好物かつ、私の好物でもあるので、香りに含まれていたら嬉しいと思い記述しました。
以前からコーヒーの香りを手軽に楽しめるグッズが欲しかったのもあります。
今思えば後者はいらなかった気がします。私は他者の自由な自キャラ解釈が好きなので、完全にお任せしても好ましい香水が届いたと思います。
推しの香りにこだわりがある方や、すでにイメージを持っている方は詳細に記述してよいと思います。
苦手な香りについて
私は特に苦手な香りが無いので、同居人の苦手な香りを記述しました。
一人で使う予定だったのですが、万が一香害になると嫌だなと思ったからです。
香水感想
注文から三週間程度で香水が届きました。
箱がかわいいです。プレゼント箱みたいで、誕生日が早く来たような気分になりました。
小箱の中に香水と解釈レターが入っています。
解釈レターを読む
香水を試しながら解釈レターを読みました。
解釈レターはScentlyで注文した香水に付属しています。
解釈レターには、なぜ香料が推しに合うと思ったかについての選出理由を、オーダーシートの記述や香料の背景説明などを交えながら書いてあります。
左側が香料の表、右側が香料の選出理由とメッセージです。
(香水は一般的に、時間と共に香りが変わります。時間経過を三段階に分け、どの段階では何が香るかが解釈レターには書かれています。香りはトップノートからミドルノート、ラストノートへと遷移します。)
香料について調べた表です。個人的に調べたものであり、情報が少ないものもあったため、正確性は保証しかねます。
ノートおよび各ノートを頭文字のアルファベットで表現しています。
ジンジャーの花言葉にジンジャーリリーの花言葉を含めています。ジンジャー(生姜)とジンジャー(花縮砂)は別物です。しかしジンジャーの花といえばジンジャーリリーという印象を受けたこと、ジンジャー(生姜)の花言葉が見当たらなかったことなどから、ジンジャーリリーの花言葉を記述しています。
香料 | N | 簡易説明 | 花言葉 | 黒井に関連しそうな逸話 |
---|---|---|---|---|
ローリエ(月桂樹) | T | 甘く清涼感 | 栄光、勝利、栄誉、裏切り(花)、私は死ぬまで変わりません(葉) | 月桂冠、アポロン、小さな黄色い花 |
ベルガモット | T | 柑橘系、上品、甘さ | 単独の花言葉は無い? | 果実は熟すと黄色~橙色、食用に向かない(苦い) |
ジンジャー | T | スパイシー | 「豊かな心、信頼、慕われる愛、無駄なこと、繁栄、真実の愛」(ジンジャーリリー) | ジンジャーリリーは白、生姜は黄色 |
オーキッド(蘭) | M | フローラル | 美しい淑女、優雅、愛情、美、わがままな美人(デンドロビウム) | 種類や色が豊富 |
ジュニパーベリー | M | 苦味と甘み、スパイシー、ウッド | 保護、救い、信頼 | 球果は苦い、木材にならない(セイヨウネズ) |
ヒヤシンス | M | 甘く爽やか、青葉 | スポーツ、ゲーム、悲しみを超えた愛、あなたとなら幸せ(黄) | 色が多い、色ごとに花言葉がある、ヒュアキントス |
モカ | L | 苦味と甘み? | おそらく無し | |
コーヒー | L | 苦味 | 一緒に休みましょう | 黒井の好物、花が白い(コーヒーノキ)、種類が豊富 |
バニラ | L | 甘い | 永久不滅 | 樹木の生長方法、花が白い、種子は黒い、英語やゲームにおける「普通」「凡庸」 |
まずトップノートにベルガモットが含まれていて、「やっぱり!」と思いました。
香水について事前知識を収集していた際、ベルガモットは万人受けする爽やかな香りという説明を見ました。
黒井の第一印象はまさにそれなので、トップノートに選ぶならこの香りだなと思ってました。のっけから解釈を当てられていて驚きました。
また調べたところ、ベルガモットは柑橘系の果実であると知りました。黒井の好物の一つにグレープフルーツがあるので、「まさか好物を把握されている……?」と勘ぐりました。違うとは思いますが、面白いとも思います。
香料たちの花言葉がいいですね。花言葉を調べるときトップノートから調べたのですが、月桂樹の花言葉に「裏切り」があって「いきなりこれか?!」と驚きました。爽やかで甘い香りの中にすでに本性が現れているような気がしてワクワクしました。
「私は死ぬまで変わりません」もいいですね。死ぬまでこういう性格なんだろうな、こういう運命なんだろうな、という儚さがあります。
「栄光、勝利」も好きです。黒井の第一印象にすごく似合います。
ミドルノートの香料たちの花言葉「信頼、慕われる愛、無駄なこと、真実の愛、救い、悲しみを越えた愛」も好きです。
表面的な笑顔の裏で暗いことを考えている様子が想像できます。
ラストノートの「一緒に休みましょう」に黒井の真の願いが込められているようで胸が熱くなります。黒井が本当に求めているのは復讐ではなく平穏です。素直じゃない黒井が最後の最後に本音を出すシーンが思い浮かびました。どことなくゲーム本編とも重なります。
バニラの花言葉「永久不滅」をどう解釈するか悩みましたが、「愛を信じてない黒井をそれでも永久不滅の愛が支えてくれる」という解釈をすることにしました。
悪の道を行かんとする黒井に、それでも友人として想ってくれる人たちがいるという、本編のテーマ「愛」が感じられて好きな花言葉です。
またバニラという言葉には「普通」「凡庸」という意味が含まれることがあります。
その部分にも黒井の願いが感じられます。
蘭やヒヤシンスには様々な色・種類があります。黒井の多面性とも捉えられますし、黒井対他メインキャラという構図も感じられます。
特にヒヤシンスの、色ごとの花言葉と逸話が好きです。
ヒヤシンスの色ごとの花言葉の内、黒井に当てはまりそうなのは以下の通りです。
色 | 花言葉 |
---|---|
白 | 心静かな愛 |
黄 | あなたとなら幸せ |
赤 | 嫉妬 |
青 | 変わらぬ愛 |
紫 | 悲しみ、許してください |
特に愛について色々な花言葉がある点に、ゲーム本編で登場した多種多様な愛や、黒井の複雑な愛情を感じられて面白いです。
紫のヒヤシンスの存在と花言葉を知って、黒井と利田の関係性を思い出しました。
ヒヤシンスの逸話は、簡単に説明すると、「好きな人が他の人と遊んでいるのを見て嫉妬した神様が二人にいたずらしたら誤って好きな人を殺してしまった(そのとき流れた血からヒヤシンスが咲いた)」というものです。
まさしく黒井弥吉で笑いました。この逸話を持つヒヤシンスを選んでくる調香師さんに恐れおののきます。いや、嬉しいです。嬉しいけど怖いです。
これはおそらく調香師さんの意図を超えた深読みなのですが、コーヒーに含まれる黒井らしさが好きです。
コーヒーの花は白く、種類も味も豊富ですが、最終的には全て同じ黒になります。白を望みながら最終的に黒という本性が現れる、複雑な人間性だが最終的に黒井弥吉という一人に集約される、という解釈が想起できて好きです。
解釈レターを読んでいて、黒井の短所について指摘があるのが嬉しかったです。
他のScently購入者の解釈レターを見ていると、推しに対して好意的なメッセージが多く見られます。おそらくそれが購入者にとって推しの魅力だからです。
ただ私は黒井の長所より短所が好きです。短所について言及されたことが、むしろ自分にとっての黒井の魅力を汲み取ってもらえたようで嬉しかったです。
でも最初にこの記述を見たときは笑いました。やっぱり他人から見ても黒井弥吉はこういう男なんだな……と。自分の内面を言い当てられたときに出る笑いでもありました。占いなどで当たっているとなんだか笑ってしまうんですよね。
香りについて
香りの印象
まず最初に香水を嗅いだとき「甘い!」と思いました。すごく甘い。
よくよく嗅いでみると、お菓子っぽい香りという印象を持ちました。ちぼりの赤い帽子と言って伝わるでしょうか。
初めて香水を使ったときはあまり柑橘っぽさや清涼感は感じませんでした。今も主に感じるのは濃厚な甘さで、その中に柑橘の爽やかさやスパイシーさが含まれている印象です。
時間が経つと段々香りが落ち着いてきます。甘さと言うよりはフローラルさ、木材っぽさがあります。
最終的にバニラの香りとコーヒーの苦味が合わせて香ります。
推し香水・キャラ解釈と関係無くとても好きな香りです。今回の香水を使って初めて自分は甘い香りが好きだと気がつきました。特にトップノートで香るお菓子のような香りが好きです。
ラストノートのバニラとコーヒーの香りはとても気に入りました。バニラとコーヒーは元々好きな香りだったので、好きと好きが合わさって大好きな香りになった!と喜んでいます。カツカレーみたいな概念。
間のミドルノートはトップ・ラストと比べるとおとなしい香りで、これもまた好きです。ガツンとくる香りも好きですが、仄かな香りも魅力的に感じます。
ミドルノートの香りは、この備忘録を書くまでどう表現すればいいか悩んでいました。私には香りを表現する語彙も、「この香りはこの言葉で表現できる」という知識も無かったためです。
備忘録を書くために色々調べて、「フローラル」「ウッディ」という表現方法があることを自覚しました。推し香水を買わなければ気がつかないままだったと思います(特に後者)。
初めての香水ですごく好みの香水が来てびっくりしました。合わない香水が来たらどうしよう……と思っていたのですが、その懸念は見事に払拭されました。
推し香水として
推し香水としての解釈は以下の通りになりました。
- トップノートは人を強烈に惹きつける魅力を放つ
- ミドルノートにかけて物腰の柔らかさが出る
- ミドルノートで甘さが一旦薄まり、落ち着きも出るが本性の冷酷さも垣間見える
- ラストノートで落ち着きのある濃く深い甘さと苦味が出ることで、平穏という真の願いが現れる
- だが甘さの中に苦味も混ざることで、平穏を願う優しさと同時に人を恨んでしまう深い悲しみや執着心も持ち合わせる人間であることがうかがえる
- あるいは愛や悲しみ、憎しみを交えてお互い想い合う黒井と友人たちを感じられる
トップノートでは甘く強烈な香りに衝撃を受けたので、その印象を反映し、「酒でもないのに酔わされるような力強いカリスマ性がある」と解釈しました。
トップノートとミドルノートの間、を香りの一つとして数えていいのかは迷いますが、ここも黒井らしいと思ったので解釈に含めます。
仄かな甘さが残り、落ち着いていながら清涼感もある植物系の香りが、一番黒井の表の性格に近いと思いました。
ミドルノートは黒幕という役割を持つ黒井を想起させます。ただ極悪非道の大悪人ではなく、冷静な悪のリーダーという印象です。
あるいはゲーム本編七月二日のような、自分の後ろ暗い部分を見つめているとき、苦しんでいるときの黒井を思い出します。
ラストノートが香るといつも嬉しくなります。香り自体も好きなのですが、この香りのときは黒井も心を休めて落ち着けているんじゃないかな、という気分になります。もしこれを黒井が聞いたら「他者の都合で勝手に自分の気分を決められたくない」とでも言うのかも知れません。しかしそういうところまで想像できるこの香りが好きです。
個人的に平穏さは甘い香りをしているイメージがあります。ラストノートには甘さの中に苦味があることで、平穏にはなりきれない黒井の悲哀を感じました。
でもその苦味は「一緒に休みましょう」という花言葉を持つコーヒーのものというのが、どことなく救いを感じさせます。苦味ではあるけど、それでも苦味と共に幸せになっていける希望に、とな天という作品らしさが現れていると思います。
解釈レターにおいて、ラストノートを黒井と友人たちの関係を踏まえて説明していることから、ラストノートは黒井と友人たちをイメージしているとも考えられます。
友人たちと気を置かずに話せている様子がうかがえます。仲が良くても許せないことはあれど、それでも心の底ではお互い想い合っている黒井たちを想像できて顔がほころびます。
香り全体の所感としては「甘い男!」という感じです。
魅力・カリスマ性という意味でも、子供っぽさという意味でも、平和・平穏という意味でも、とにかく甘い。
香水が届く前はなんとなく酸味が強い香りを想像していたのですが、見事に印象を塗り替えられました。
全体の変化を通して、黒井という人間の一筋縄ではいかない部分が感じられました。
甘いけど、ただ甘いだけじゃない。そういうところに黒井らしさがあって好きです。
その他所感など
香水の使い方
私が試した香水の付け場所は以下の通りです。
- 紙(水彩紙)
- ムエット
- 首
- 手首
- 膝裏
ムエットとは、香水などの香りを試す際に用いられる紙のことです。試香紙とも言います。私はカード型のものを購入しました。
最近はムエットをよく使っています。本来の香りが楽しめるのは体に付けたときという記述を見かけたのですが、ムエットの方が香りが持続するような気がして、好んで使っています。
持ち歩いて好きな場所で楽しめるのもいいです。何かに挟むのもいいですね。
体の部位ごとの違いは今のところあまり感じていません。
首の方がダイレクトに香る、体上部ほど香りを感じやすいなどの記述を見かけましたが、自分ではわからなかったです。
次回購入時検討事項
次はカップリング香水(コンビ香水)を購入してみたいです。複数人の組み合わせでどういう香りが届くのか興味があります。
普段使いの香水も気になっています。キャラ概念とはまた違った香りになるらしいです。香水を普段使いしているキャラに合わせて作ってみても面白そうです。
他のキャラの香水も購入してみたいです。お財布と相談します。
オーダーシートの保存について
送ったオーダーシートは後で確認することができません。またフォーム入力中に何らかの理由で入力内容が消えることもあります。
テキストファイルなどに下書きをしてオーダーシートにコピペするのがおすすめです。
後書き
ここまで読んでいただきありがとうございます。当初考えていたより長い備忘録になってしまいました。
備忘録内で「推し語りは怪文書」というようなことを書きましたが、その点でいくとこの備忘録も大分怪文書だと思います。
自分の創作物について延々と語る不気味な文書ですが、それでも楽しんでいただけたなら幸いです。
まだ推し香水を買っていない方はぜひともご購入ください。そして怪文書をどこかに書き殴ってください。推しに熱狂する人間からしか得られない熱量があります。
購入済みの方はこれからも楽しみましょう。
良い推し香水体験に出会えることを願っています。