『愛とはあなたを破壊する魔法』制作記録六

2023年4月8日

目次
  1. 進捗
  2. シナリオコンバータについて
  3. キャラクターシートについて

進捗

物語冒頭の演出を作ったり、サブキャラの立ち絵を描いたり、キャラクターシートを作ったり、ゲーム制作補助ツールを制作したりしていました。

シナリオコンバータについて

制作記録五で紹介したシナリオコンバータがほぼ完成しました。
画像一枚目のシナリオを画像二枚目のスクリプトに変換できています。
ツールのデモンストレーション用に、ほぼ日本語で書いたシナリオを変換してみました。

私は何かを作るときに、公開するつもりがなくても、どうすれば他者に特徴が伝わるかを考えて作ることにしています。そうすると自分にとってもわかりやすいものができるからです。
シナリオコンバータは日本語でシナリオが書けることが特徴の一つだと考えたため、このシナリオを用意しました。
例えば、Light.vnのように日本語でシナリオが書けるという利点を、他のゲームエンジンでも擬似的に再現できます。

……ただこのツール、CUIで動作するので、日本語スクリプトの需要があるゲーム制作初心者にはあまり向かないんですよね。正規表現以外にPythonによる変換もできますが、そのためにはPythonの実行環境が必要です。
またこの変換を定義するプリセットもテキストファイルで設定するため、初心者にはよりわかりにくいと思います。

前回の記事でも書きましたが、正規表現を使わないシナリオコンバータならティラノスタジオProがおすすめです。GUIで動くのでわかりやすいです。

もしこのツールを触ってみたいという方がいらっしゃいましたら、githubでソースコード・exe版を公開していますので、そちらをご参照ください。

Github
SCBS

キャラクターシートについて

プロットを煮詰める過程でキャラクター造形も煮詰める必要があると考えたため、キャラクターシートを作りました。

いつもは物語制作開始時に作るのですが、今回はプロットを先に作る制作形式を試したかったため、制作を見送っていました。
画像はメインで活躍する二人のシートです。

くるっぷで別のゲームのキャラクターシートを紹介していましたが、ほぼ同じシートを使用しています。
ネタバレを避けつつ一部抜粋して紹介します。

価値観

項目佐久真旭
その人の人生を物語・あらすじで表現する魔法が嫌いだ。魔法とは愛と謳いながらいつも俺を傷つける。でも悪いのはいつだって、魔法なんかで傷つく俺のほうだ。……同じように、お前が傷つくのも俺のせいだとしたら。それでも俺は、たった一人の友達の全てを背負いたいよ。
第一価値観(周囲から見た評価)真面目、ルールにうるさい、神経質、怒りっぽい、魔法嫌い、個人主義
第二価値観(本人が実は思っている)自分を犠牲にして円満に進むならそれでいい
第三価値観(本人も気がついていないか、見て見ぬフリをしている)大切な人のためならなんでもする、本人の望みや苦しみは受け入れる、自分に価値は無い、価値は無いけどそれでも何かしたい
心的パーソナリティスペース
(無造作に立ち入られると不快になる・憤怒する価値観・概念)
魔法、愛、母、伊方

心的パーソナリティスペース以外はとな天時代からある項目です(とな天のキャラクターシートは先日配布したアートブックで閲覧できます)。

そのキャラクターが歩んできた人生を一つの物語としてまとめています。短いプロットのような役割があり、ここがきれいにまとめられるとキャラクターに一貫性が出ます。

キャラクターの価値観は三段階に分けて記述します。私はキャラクターを書くとき二面性や対比を意識します。いわゆるキャラクターのギャップで、ここが印象的なキャラクターにすごく惹かれます。

またキャラクターには、自身の価値観に対する正当化と、それに反する内省があると思っています。例えば正義感が強いキャラクターが正義は絶対だと考えていて、しかし心のどこかで正義は万能では無いと悟っている、などです。
そういった細かな本心も残しておくとキャラクターに愛着が湧くので、価値観を三段階に分けています。

認知の歪み

項目佐久真旭
ある人は、見知らぬ家に強盗に入った犯罪者である。しかし、それは同じホームレス仲間たちにパンを与えるためだった。彼に与えるべき処遇を述べよ「なんだその例え話。いや答えろって言うなら答えるが……。 少なくとも何かしら情状酌量があるべきだろ。なりたくてなったホームレスばっかじゃない、社会のせいで今日の飯が食えない奴がいるんだ。そういう人たちをこれ以上罰するなんて間違ってるだろ」
前問の加害者は、どうするのが正しかったか「また難しい話を……。正しいもクソもないだろ。その人はもうこうするしかないって追い詰められてたんじゃないか?なら外野がこうするべきだったなんて、責められないだろ」
あなたの悪いところを一つ教えてください「ものの見方が批判的なところだな……」
あなたの良いところを一つ教えてください「真面目ではあるらしいぞ。皮肉もあるんだろうけど」
項目伊方終
ある人は、見知らぬ家に強盗に入った犯罪者である。しかし、それは同じホームレス仲間たちにパンを与えるためだった。彼に与えるべき処遇を述べよ「佐久真、ショグウって何。……ふーん。オレこういう難しい話苦手~。そういうの佐久真に聞いてよ。……まあ答えろって言うなら言うけど、たいしたこと言わないよ。 そいつはパンを盗んだ、だから盗んだ罪になる。それ以上のなんでもねぇよ。仲間に食わすためとか、社会がいちいち気にしてくれるわけないじゃん。あたりまえだろ」
前問の加害者は、どうするのが正しかったか「正しいもクソもねぇよ。明日の飯が食えないなら、そうする以外無いだろ」
あなたの悪いところを一つ教えてください「……(沈黙)。……全部」
あなたの良いところを一つ教えてください「顔はいいらしいよ」

「」内はキャラクターのセリフです。キャラクターが直接答える項目を作ることで、口調などを把握する狙いもあります。

認知の歪みとは、すごくざっくり言うと、物事を見るときの先入観です。

例えば雨が降ったとき、ある人は「昨日仕事をさぼったバチが当たったんだ」と考えるかもしれません。あるいは「今日は楽しみにしていたことがあったのに、雨が降ったら全部台無しだ」と考えるかもしれません。

客観的に見れば、雨は自然現象であって個人の行動と因果関係はありませんし、雨が降っても他の対処法があることが多いです。ただ人間は瞬時に物を考えるとき、つい先入観を持って考えてしまいます。

こういった瞬時の思考にはキャラクターの個性が強くでるので、キャラクターシートに採用しています。例えばこの佐久真というキャラクターは正義感が強いという設定があるので、「~すべき」という言葉をよく使います。いわゆる「べき思考」で、これも認知の歪みです。
こういった認知の歪みが出そうな質問を十項目ほど用意しています。

心理学系の知識は創作と相性が良いのでよく取り入れます。ただ私は心理学の専門家ではなく、創作に使いやすいように改変しているので、知識としては間違っていると思います。

ビッグファイブ理論

項目佐久真旭
会議が始まった、あなたは何をするか何もしない。聞かれるまで発言もしない。書記ができそうなら書記をする(あんまり話さなくても文句を言われにくいため)。
あなたが議長を務める会議で、意見の対立が起きた。議論は建設的なものである。あなたの言動はどのようになるか。あなたの心情の仔細特に普段と変わらない。建設的な議論はわりと好きな方。
あなたが議長を務める会議で、意見の対立が起きた。議論は建設的なものから逸脱しつつある。あなたの言動はどのようになるか。あなたの心情の仔細都度意見をまとめ、建設的な会議に戻るよう促す。その感情的な意見は会議に関係ないと意見する。平静を装うが、本心は面倒くささや怒りで満ちている。
自分が提出した書類に不備が見つかった際の対応不備のあった点を聞き出し、素直に謝って再提出。一見落ち着いているが、指摘を受けた瞬間は「そんなはず無い」と考えてしまうタイプ。
納期があと1日しかない。あと2日あれば満足するものが完成する。そのときどうするかとにかく一日で完成させるための計画を建て実行する。無茶が必要な部分は自分を犠牲にする。

ビッグファイブ理論とは、簡単に言うと、人の性格を分類する理論の一つです。
例えば「コミュニケーションが得意で外交的である」「思いやりに篤く協力的」などの性質を、五つの指標で評価します。

ビッグファイブ理論に基づいた診断には本格的なものもありますが、ここでは簡易的に十三項目の質問を用意しています。

特に好きな質問は会議についてです。会議に関する質問はこの二人のみならず、他の自作キャラクターでもそれぞれ個性的な言動をするので、キャラクターの本質が出やすい質問だと思っています。

例えば空気を読んで面倒ごとを引き受けてしまうキャラクターは議長になりやすいです。
論理的で自己主張力の高いキャラクターは議論に熱中し、居心地が良いと感じます。逆に争いごとを避けたい人間は会議に消極的で、議論が熱くなると喧嘩の渦中にいるような緊張感を覚えます。
内向的なキャラクターは発言が少ない傾向にありますが、実は議論をしっかり聞いていて、心の内では確固たる意見を持っていることがあります。

他にも、議長になったとき場をうまく回せるかどうかや、感情的な議論になったときに諌められるかどうかに個性が出やすくて、考えるのが楽しい項目です。

家庭環境

項目佐久真旭
家庭で推奨される価値観父:一度始めたことは最後までやり通す。一度愛した人も最後まで愛し通す。
母:自分らしく生きる(誰かのために最後までやり通す自信が無い)
価値観をあなたが侵犯した際の家庭の反応父:諦めるなと叱責する。自分と息子は同じ信念を持っていると考えている。
母:泣く。謝る。
子と同じ目標を持っている(と感じている)とき、子が目標を達成できなかった場合、親からの反応父:次頑張ればいいと励ます。
母:泣く、逃げる。
家庭の属性を表わす言葉放棄、逃避、辛抱、忍耐、責任
親の人生における子存在父:自分が今一番愛してあげられる人、愛せるうちに愛していたい人。
母:人生最大の困難にして汚点
子の人生における親存在父:育ててくれた恩人。尊敬できるようでできない面もある。ある意味親しみやすい人。
母:二度と会いたくない人。

私はキャラクターの家庭環境を考えるのが好きです。人の性格には生まれ持った性質と環境から得た性質があると言われています。基本的に家庭は人生で最も長く過ごす環境です。なのでキャラクターの核となる性質が家庭環境に表れていることが多く、掘り下げがいがあります。
キャラクターシートの中でも重要視しているため、他のカテゴリー(認知の歪みやビッグファイブ理論など)と比べて項目数も二十二と多いです。

普段家庭環境を考えるときは、父親や母親、共に住んでいる家族もひっくるめて一つの家庭として扱います。
ただたまに、佐久真家のように父親と母親で価値観が分かれているときがあります。こういうときは分けて記述します。

好きな項目は親(子)における子(親)の存在感についてです。私はキャラクターの関係性が好きです。感情が重くて愛なのにどうしようもなくすれ違っている関係性がとりわけ好きです。
親と子は必然的にそういう関係になりがちなので、この項目を考えるのも楽しいです。

逆に円満な家庭環境にあるキャラクターも、お互い何かしら不満や疑問を感じていることがあり、そこに家庭の個性を感じて楽しいです。家庭も一人のキャラクターであるように思えます。家庭用のキャラクターシートを作るのも面白いかもしれません。


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