カテゴリー: 愛とはあなたを破壊する魔法

愛まほ短編小説『桜海に朝』

2025年4月12日
概要 本編 薄暗い夜空の端から明るくなり、朝日が桜を照らす。満開だ。一つ一つは白い花でも、木々が集まるとほのかに桃色が浮かぶ。 男が見上げる。白い髪、薄い肌、色の抜けたパーカー。花の中で黄金の瞳が光っている。黒いメッシュと幹だけが濃い。重い前髪の下で瞬く。口が少し緩んでいた。 風 […]

愛まほ短編小説『桜海に夜』

2025年4月12日
概要 本編 桜が光っている。花は白くほのかに光り、寄り集まった大きな光が夜空を覆い隠している。光の当たった幹がずっと遠くまで並んでいるのが見えた。 男が桜を見上げていた。ざっくりと切った前髪の下、黒い瞳の中に、桜の光が映っている。老け顔とからかわれたしかめっ面も緩み、むしろ幼く見 […]

愛まほ短編小説『師友』

2025年1月11日
概要 本編 死を見送った者の顔だった。眠そうな目にはくまが沈んでいて、私を見て柔らかく目尻を引いた。口は薄く笑っているのに、眉は少し困っている。黒いくせっ毛はいつもよりまとまりがない。 「おはようございます、店長」 佐久真旭君の第一声だった。私も「おはよう」と言った。それだけだっ […]

愛まほ短編小説『後悔』

2024年12月14日
概要 本編 魔方陣とは黒インクの編み物です。 ダイニングテーブルを覆い隠す紙には、縁から縁まで幾何学模様が描かれている。真円の中幾重にも編まれた均一な線は、全てわたしが描いたものだ。線は、分岐も含めれば、全て一本で繋がっている。 「美しい魔法だ」 テーブルを挟んで目の前に立つご老 […]

愛まほ短編小説『決意』

2024年11月9日
概要 本編 生きた死体だ。飯と便所以外は寝腐っている。 日ざしが痛くてとっくにカーテンは閉めた。ダンボールとゴミの山に囲まれてオレは倒れ込んでいる。押し入れに頭を突っ込んで薄い敷き布団を枕にする。押し入れが暗いか、もっと暗いかで昼夜を知った。 油の臭いが漂っている。廊下に転がって […]

十月毎日小説執筆企画まとめ

2024年10月5日
概要 おごりがい 2024/10/01とな天 店内にいるのは、チャーハンをかき込むサラリーマンや酒をあおる老人。店に入るとき、煙草の匂いがした。店の中央の席を陣取る学生服のおれたちは浮いていた。 「ほら、好きなだけ頼め」利田先輩からメニューを手渡される。 九十とメニューを見る。ザ […]
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