カテゴリー: オリジナル

愛まほ短編小説『決意』

2024年11月9日
概要 本編 生きた死体だ。飯と便所以外は寝腐っている。 日ざしが痛くてとっくにカーテンは閉めた。ダンボールとゴミの山に囲まれてオレは倒れ込んでいる。押し入れに頭を突っ込んで薄い敷き布団を枕にする。押し入れが暗いか、もっと暗いかで昼夜を知った。 油の臭いが漂っている。廊下に転がって […]

とな天短編小説『偽善者』

2024年10月12日
概要 本編 黒く小さい手を組み、君は顎を引く。耳の上で切りそろえた黒髪が風に揺れた。長い前髪から伏せた目が覗く。結んだ唇に軽く力を乗せている。 校舎裏の片隅、フェンスの側。そこで君は地に膝を突いていた。眼前には頭ほどの大きさをした土の山がある。君が埋めた墓だ。 君ほど素晴らしい偽 […]

十月毎日小説執筆企画まとめ

2024年10月5日
概要 おごりがい 2024/10/01とな天 店内にいるのは、チャーハンをかき込むサラリーマンや酒をあおる老人。店に入るとき、煙草の匂いがした。店の中央の席を陣取る学生服のおれたちは浮いていた。 「ほら、好きなだけ頼め」利田先輩からメニューを手渡される。 九十とメニューを見る。ザ […]

とな天掌編小説集『短く永く』試し読み

2024年8月23日
概要 バス ヒサとバスに乗る。そわそわするヒサ。「降車ボタン、俺が押してもいい?」了承するとそっとボタンを押す。ベルが鳴り「おお!」と言う。「小説で見たことあって、押してみたかったんだ」他にも叶ったことがあるらしい。回数券を取る、車内放送を聞く、友達とバスに乗る。「今日だけで三つ […]

長編小説『悪魔の正しい死に方』

2024年7月27日
死んだはずの幼なじみ・黒永愛一が悪魔になって帰ってきた。安藤正継は死神から黒永の殺害を依頼される。悪魔は人を食べないと生きられない。だが人を食べて強くなりすぎた黒永を殺せるのは、もう安藤しかいない。黒永は言う。「この体さえあれば、キミをもう一人にしない」安藤は黒永を殺せずにいた。悪魔になった幼なじみを殺すまでを描く陰鬱ブロマンスサスペンスノベル。

とな天短編小説『天使がいなければ』

2024年4月1日
概要 本編 九十九くとうひさしは大きくあくびする。褐色の腕を天井に振り上げて伸びをすると爪先が立つ。長い黒髪に手を突っ込んで頭をかく。西勇人にしゆうとは違和感を覚えた。 「九十、背が伸びたか?」 九十が西を見上げる。背も横幅もある西に対し、九十は小柄だ。だが年頃の青年らしく体に厚 […]

とな天短編小説『秘密』

2023年7月15日
概要 本編 「いってきます」 声が誰もいない家の中に響く。玄関扉のドアノブにかけた手を見て、学生服の袖が足りていないことに気がつく。中学校の制服が一年も経たずに寸足らずになった。黒井は黒髪を掻く。 玄関を出ると、ブロック塀に令城が寄りかかっていた。令城はスマホから顔を上げて軽妙に […]

パスワード公開:とな天公式二次創作短編集『まいにちを君と共に。』

2023年4月29日
『となりのクラスの知らないあの子は天使になったんだ』の公式二次創作です。黒井弥吉と令城談のコンビの話で、ジャンルは「肉体的接触の濃いブロマンス」です。 この短編集は、作者が個人的に行っていた毎日小説執筆企画「まいにち黒令」で執筆した短編小説七本を加筆修正してまとめたものです。 試験的にパスワード公開をしております。読みたい方がいらっしゃいましたら、お手数ですがDMやメールなどでパスワードをご請求ください。

掌編小説『いつかまたここへ』

2023年3月25日
概要 百合(ロマンシス)掌編小説です。 本編 和久井華は幽霊だ。褐色肌、金髪、ブラウスとスーツパンツ、全てが半透明の体の奥に、夕日で照らされたブランコが見える。 「つぼみ」 ハンドシャベルで地面を掘り返していた和久井が名前を呼ぶ。 「これ?タイムカプセル」 共に掘り返していた寺西 […]
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