悪たし小ネタ『安藤正継の誕生日』
前置き
一月十日は安藤正継の誕生日でした。
とな天のキャラクターを祝って悪たしを祝わないのも変なので、ちょっとしたイラストを描いて、小ネタをいくつか書きました。
現実との連動について
悪たしは2024~2025年のお話という設定なので、ちょうど先週の十日が、本編第五章でお誕生日会が行われた日になります。
せっかく年まで同じ日を迎えられたのだから、当日に何か催しをすればよかったな……と後悔しています。
しかも六章の水族館で遊ぶ日すら昨日だったんですよ。失敗したなあ。
五章以降の重要なイベントのうち、あと現実世界と連動できそうなのは、「安藤が黒永の介錯をする日」(設定では二月八日)だけですね。
その日くらいは何かしたいです。できるかはわかりませんが。
記念日や催事の日はつい忘れてしまいます。特別な思いを込められる日ですから、覚えていたいのですけどね。
本編執筆時について
大口一家(と黒永)が安藤のお誕生日会をする場面は、当時書いていて楽しかった思い出があります。
五章までは、コメディタッチな瞬間こそあれ、基本ずっとシリアスなお話を書いていました。
お誕生日会でようやくコメディっぽい明るいお話が書けて、お話と連動するように自分の気持ちも明るく楽しくなっていました。
シリアスなお話を書くことは好きですが、シリアスを書くときの「楽しい」とコメディを書くときの「楽しい」は違う気がします。
大口夢成について
お誕生日会は大口夢成がどういう人物なのかようやくわかるエピソードです。
「殺人犯」「黒永よりも強い悪魔」という情報や、四章の大口に変身した黒永の印象があった上で、非常にほんわかした人物として出てきます。
設定を作った身ではありますが、自分でもびっくりしました(読者にも驚いていただけたらいいのですが)。
本来の大口って本当はこのお誕生日会のような人なんですよね。
大口は、優しくて、ちょっと抜けたところもある、家族を愛する平和主義者です。
ただ同時に悪魔としての素養も持っています。
大口は学生時代、事故に遭い死亡したことで悪魔になりました。
そこから生きるために人を食い、(詳細は割愛しますが)仕事として大量に人を食べるようになった、という経緯があります。
悪魔は執着から生まれます。大口の執着は「家族」です。
天涯孤独だった大口は、自分だけの家族をつくることがずっと夢でした。
夢半ばで亡くなっても、その後たとえ人を殺すようになっても、夢を諦めきれませんでした。
家族のことは心から愛しています。
人間を殺すこと・食べることにも倫理的なためらいがあります。
その上で、「自分の夢のためなら何を犠牲にしてもしょうがない」という決断をする人です(あるいはその決断をしてしまうことを自分で止められない人です)。
今の大口には夢と倫理を天秤にかけられる理性がありますが、もし家族の身に何かあれば、なんのためらいも無く家族を選べる人でもあります。
その辺りは制作予定のゲーム版『悪魔の正しい死に方』で描けたらと思います。
安藤正継について
安藤が嫌いなものは「冬」です。
大口が冬に逮捕されたことが由来です。
自身の誕生日の直前に大口が逮捕されたことも、嫌いになった理由の一つです。
安藤は、誕生日自体は好きでも嫌いでもありません。ただ思うところはあります。
安藤には大口が逮捕されるまでの間に行った家族とのお誕生日会の記憶があります。
安藤にとってとてもうれしかった記憶です。
だからこそ、大口逮捕後はその記憶に蓋をしていました。
思い出すことはあったかもしれませんが、思い出として懐かしむことは無かったと思います。
家族の楽しかった時間は二度と手に入らないものだと感じていたので、思い出すと悲しく・むなしくなるためです。
本編五章までは誕生日を祝われることもほとんどありませんでした。
例え祝ってくれそうな人がいても自分から断っていたと思われます。黒永にも同じようにしていたのではないでしょうか(それでも黒永は祝ったかもしれませんが)。
五章以前の安藤は、自分から幸せや幸福な感情を遠ざけてしまう人でした。
自分にはその資格が無いと思っていたからです。
でも心のどこかで、「誰かに祝ってほしい」「もう一度家族との時間が欲しい」と願っていました。
おそらくこのお誕生日会の後は、誕生日のお祝いを素直に受け取れる・喜べるようになります。
大口一家について
この記事を書くために本編を読み返して、「大口夫婦って面白い人たちだな……」と思いました。自分で書いておいてなんですが。
安藤が生まれていない頃はツッコミが不在だったので、永遠に二人でボケ合っていたと思います。
そのせいで場が盛り上がりすぎてしまい、楽しいけど疲れてしまった、というもあったのではないでしょうか。
「大口夫婦ってめちゃくちゃ親バカだな」とも思いました。
「安藤はかわいい系」と言っている場面がありますが、二人は本気で言っています。
黒永がいたら「どう見ても地味系でしょ」と怪訝な顔でツッコんでいたことでしょう。
大口一家って本当は家族愛が強い人たちなんですよね。
お互い思い合うからこそ、「自分は相手を不幸にしている」と思って離れていってしまう人たちでもあります。
悪魔事件を通して、大口一家が最後の一瞬だけでも本来の家族の形を取り戻せたことをうれしく思います。
それを許さない人たちももちろんいます(大口事件の被害者遺族など)。
大口(一家)は死という罰を受けましたが、それでは不十分という見方もできるでしょう。
それでも、私は大口一家に幸せになってほしいです。
大口は亡くなりましたが、安藤と守理の人生はこれからも続きますし、大口も世界のどこかに魂として存在します。
これからも家族というきずなで結ばれていてほしいです。