とな天小ネタ『名前の由来』
発端
友人と名付けの重要性の話になり、創作においても名付けにはこだわりがあると気づき、まとめてみたら面白いのではないかと思った。
一覧
キャラ | 作中理由 | メタ理由 |
---|---|---|
九 | 九十九歳まで(という途方もない年齢ほど)長生きできますように、九十九人友達ができますように、自己紹介でウケが狙えますように | 初期案でのタイトル「黒い道徳」から |
黒 | この子の体に吉が行き渡ることが、ひいては世界に吉が行き渡ることになりますように。 | 初期案でのタイトル「黒い道徳」から。また性格を表わした古風な名前に |
利 | 金星のように誰よりもキラめく一等星に! | ヤンキーっぽい名前に |
令 | 話すことが得意な子になりますように。 | 特になし |
西 | 両親の間でもめた結果祖母の助言もあり折衷案を採用した。 | 他四人と名前の印象が被らないように |
作中理由は「キャラクターの親または名付け親が名付けた理由」です。
メタ理由は「ゲーム製作者が名付けた理由」です。
解説
九十九
作中理由は本編でも概ね書いたとおりです。九十九人の友達に関しても、年齢と同じく「そのぐらい多くの友達ができますように」というニュアンスで名付けています。
九十は元々キャラクターコンセプトが「普通のフリした異生物ノリ系陰キャ」で、それに伴って両親の性格も面白く緩くあるだろうと考え、名付けも同様のセンスにしました。
メタ理由は、とな天初期にあったタイトル案のうちの一つが由来です。
とな天製作初期のプロジェクト名は「くろいどうとく(黒い道徳)」でした。また初期案では九十と黒井のみをメインキャラとして物語を進行する予定だったため、タイトルから二人の名前を付けたらおしゃれだなと思い、タイトルを後ろから読んだ「くとう」と名付けました。
ちなみに没になった黒い道徳というタイトルは、OP曲のタイトルとして採用しています。とはいえゲームに使った音声ファイルには機械的な名前を採用しているので、プレイヤー側からは確認できないのですが……。
黒井弥吉
黒井の名前はまずメタ視点から考えました。九十と同じくタイトルから名前を付けてまず名字が決まり、次は下の名前をどうするかということになりました。
黒井は元々「天使という安楽死システムを造って善意で世界中にばらまいた黒幕」という設定でした。金髪ツーブロックピアスという遊び人のような見た目でこのような犯罪をするギャップを表現するために、「古風で真面目な印象だが古風すぎて現代の価値観からは少しずれている名前」を付けました。
また、子どもの幸せと同時に世界の幸せを望むあたりに、黒井の両親の真面目な性善性を感じさせるように名付けました。
この名前はキャラにピッタリの名付けができたと思っていて、結構気に入っています。
利田金星
初期の時点で柄の悪い兄貴分というキャラが一貫していたので、両親も同じように少し反社会性があり、それでいて熱意と善性は感じられるような名前にしようと思い、この名前を付けました。なお最初に金星という名前を提案したのは利田の父です。
一覧表には「金星のように~一等星に!」と書いていますが、金星はマイナス四等星で一等星よりも明るいそうです。星の名前を付けることは決めていたのですが、どの星にしようかは少し悩みました。星を調べる過程で金星がマイナス四等星と知り、「めちゃくちゃ明るい星=一等星」という考えを持った人が名付けたという背景も含めたくて、最終的に金星を選びました。
第一子の金星が星の名前だったので、以降生まれた子どもにも利田夫妻は星の名前を付けています。長女が水星、次女が月(ルナ)です。なお次男は「大洋(太陽)」なのですが、次男は養子なので、利田夫妻が名付けたわけではありません。
名字の由来に関する記録は残念ながら残っていないのですが、キャラ造形を煮詰める過程で「良家の子ども」という設定が生まれたので、古代から地位が高そうな名前にしようと思って付けたと推測されます。実際の利田がそういう由来を持った名前なのかはわかりません。
令城談
初期から「両親は不器用な愛し方しかできなかった」という設定があり、他メインキャラと比べたとき違う印象を受ける名付け理由にしようと考え、この名前を付けました。他メインキャラは名付け理由が長かったり、凝った理由がありますが、令城はシンプルに一行で能力の向上を願っています。
なぜ会話能力に言及しているかというと、令城の父が寡黙であったことが理由です。令城の父は誰かに本心を伝えられないことで生きづらさを抱えていましたが、令城の母と出会い本心を打ち明けたことで気持ちが軽くなった、という経緯があり、話すことの大事さを息子に伝えたかったため談と名付けました。
また令城の父は「息子には暴力的・反社会的な自分とは違う生き方を選んでほしい」と思っていたため、もっとも自分とかけ離れた「お喋りな子になること」を息子に望みました。加えて、他にも会話に関する漢字があった中で、談話という平和と温かさを感じさせる熟語に使われている漢字を選ぶことで、今までの自分とは違う温かい家庭を築こうという決意も含まれています。
令城のみ名付けにメタ理由がありません。利田と同じく記録が残っていないためです。
ただ最初期の資料には「四条談」と書かれており、製作過程で名前を変更したことがうかがえます。覚えている限りでは、イニシャルを統一するために、四条から令城に変更したと記憶しています。
メインキャラの名前に法則性があると覚えやすく、覚える速度が速ければ、製作中いちいち名前を確認する必要が無くなり効率的です。九十と黒井はイニシャルがK、利田はRだったため、対称感を出すために令城にRを当てました。K二人でメインのシナリオを進め、それをR二人のサブキャラが支えるという構図だったわけです(実際はR二人もがっつり物語に関わることになるのですが)。
西勇人
「両親の間でもめた」とありますが、なぜもめたのかというと、父と母両方が名前を提案し、どちらも最後まで譲らなかったためです。
西の母は「游眞(最近っぽくてかっこいい上周りになじむ、遊びに真理を見よ)」がよいと言い、父は「春仁(好きな少年漫画のタキシード仮面的ポジションの名前、春のように優しい仁義を持った人に)」がよいと言いました。最終的に二人の名前を合わせて「游人」になり、西の祖母が「それだと縁起が悪い」と口を挟んで「勇人」になりました。縁起が悪いと言うのは、具体的には姓名判断の結果があまりよくないことを指します。
西は苦労人というのがすでに決まっていたので、こういう家庭で苦労人が生まれたんだな……というのがわかるような名付け理由にしました。また両親ともに遊びやマンガなどサブカル的概念を名前に求めていることで、両親がそもそもオタクであることから、西のオタク的素養が必然的に生まれたということも表わしています。
メタ理由については、西というキャラクターは生まれた時点で異世界転生者であることが決まっていたので、異質な存在であると表わすために、四人の誰とも被らないイニシャルを付けました。唯一名字が一文字であることも同じ理由です。
ちなみに勇人は「ゆうと」と読みます。西だけ初登場時にふりがなを振っていないことを実況動画を見て初めて気づきました、すみません……。折を見て修正しておきます。
感想
キャラクターの名前を付けるのが好きです。サブキャラやモブキャラの由来もどこかで語れたらいいなあと思いました。