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『苦楽6』

2022年9月30日
あたしの救いがたい罪につけ込んで腐った脳を、血をくべた炎でドロドロに溶かして、装飾された鋳型に流し込んで、冷えて透き通ったガラス美人画の、あたしではないあたしを愛して。世界の三原色を透過して、ところどころ不透明に輝くかつてのあたしに、あなたの罪を映して。

『苦楽5』

2022年9月25日
あなたの苦しみより先に、わたしの苦しみを置いておきたいの。それが地平線上にあるものだから、どうしたって神様は、衛星写真しか見ていないってわかるの。

『サイレンの歌』

2022年9月22日
身体を剥いで歌ったサイレンに、どんな囁きでもいいから返事をして。皮を、骨を、臓器だって音に変えて、渾身の血肉で叫んで、跡形も無く私がほどけても、「そうだね」という平坦な声だって聞き逃せない。私たちは二度と明かりの付かない暗室にいる。だから声を出すことだけが、どんな声を出すかという […]

『生死4』

2022年9月22日
死ぬよりもずっと辛いところへ行こう。生まれることも生きてることも間違いだって何度だって証明しよう。そうして僕たちの教科書を編んで存在しない僕たちの子どもに贈るんだ。喜んで、喜ばないで。

『愛2』

2022年8月5日
愛の終わりを教えて。いつの間に、しめやかに、棺桶で眠っていたかつての恋人の顔を教えて。きっとわたしの恋人と、やすらかさが、軽さが、そっくりそのまま同じに見えるから。愛の終わりが間違いなく誰にでもあることを教えて。その方が多分、安心する。

『復讐ですらないと思ってしまったんだ』

2022年7月24日
貴方の作ったものをめちゃくちゃにしてやりたいのよ。数時間かけて配給した食事を焼却炉に捨てて、三日かけて描いた絵を粉々に砕いて、幾年かけて無駄にしたあたしを追いつけないところに埋めてやりたいの。それでも貴方が、箱に遺った骨を、子どもより軽そうに、命より重そうに、抱きしめたとき、どう […]

『なにもかも捨てて遠くへ』

2022年7月21日
なにもかも捨てて遠くに行きたいの。だれも知らない、あたしだって知らないところへ行って、あたしがだれから生まれたかまで忘れてしまいたいの。そうしたら、地から足が浮いて、質量という変数はNULLになって、自分が救われたことだけを知って、消えちゃいたい。

『苦楽4』

2022年7月20日
わたしの鼓動がどんなに加速したって、あの家の照明は夜になると消える。

『わたしの心が皆になる』

2022年7月19日
誰かの美しい金言に気持ちを言い当てられるたび、わたしの心は皆になって、宇宙の速度で殺される。わたしの無為な叫びは気持ちを言いふらしているだけ。もっと意味のある悲鳴を。もっと美しい悲鳴を。

『はじめて眉を整えた日』

2022年7月18日
はじめて眉を整えた日に考えたのは、皆と同じ顔になること、少しかっこいい自分になること、想定より不格好な切り口になったこと、だった気がする。もっと上手い顔になりたくて、いろんなコスメを並べて、製品のこだわりを羅列して、職人として技術論を体系化したの。そしたらね、膝まで隠したセーラー […]
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