十月毎日小説執筆企画総括
概要
十月は毎日小説と絵を一作ずつ制作する「十月毎日小説執筆企画」(以下「本企画」)をしていました。
本企画の総括(企画経緯振り返り、感想、反省、技術記録、小ネタ語りなど)をします。
小説とイラストは以下リンクから閲覧できます。
制作者Twitter(X)でも閲覧できます。
企画経緯
本企画は世辞涼さんが行っていた「毎日イラスト投稿チャレンジ」に触発されて生まれました。
毎日イラスト投稿チャレンジは世辞涼さんのTwitterから閲覧できます。
私は「秘密にしてね」「スモア・ゴースト」が推しイラストです。
(去年は「シルク」「宇宙におやすみ」が推しです)
世辞涼さんが毎日イラスト投稿チャレンジをすると聞いて、私も同じようなことがしたくなりました。
世辞涼さんは去年も同じ企画をされていますが、実は私も去年、世辞涼さんと同時期に毎日小説執筆企画を行っていました。
個人的に行っていた企画で、当時は百四十字小説を執筆していました。
(この企画で書いた小説は一部、書籍『短く永く』に収録されています)
去年の企画も世辞涼さんに触発されて始めました。
当時は「世辞涼さんが絵ならこっちは小説を書こう」という動機で小説を書くことに決めました。
今考えると動機の機序がよくわかりませんね。
今年も毎日小説を執筆するにあたって、去年よりもグレードアップしたものが作りたいと思いました。
なので文字数を増やし、「はがきサイズに収まるくらい※」で統一することにしました。
※今回の組版では六百字前後。
百四十字小説が名刺・B8サイズに収まる文量であったことから、それより一回り大きいはがきサイズを文字数の目安にしました。
またはがきサイズで制作すれば、将来グッズ化などがしやすいと思ったことも選択の理由の一つです。
また、今年はおまけ絵も毎日描くことにしました。
これは当初の計画には無かったアイデアで、見切り発車です。
一日目の小説を書いたとき、「話の外でこんな話も繰り広げられていそう、それも作品にしたい」と思い至りました。
どういう形で作品化するか考えた結果、SNSに投稿しやすい一枚イラスト形式を選びました。
漫画風イラストにしたのは、他の作業時間を圧迫しない短時間で描ける形式が望ましかったからです。
本企画では週ごとにテーマを設定し、それに沿って物語を考えました。
週ごとにテーマを設定することは自然に決まりました。
元々本企画は途中で二次創作を挟む予定でした。
二次創作を書くなら区切りの良い期間で行うべきと思い、「二次創作を書く週」が決まり、せっかくなら週ごとにテーマを決めよう、という流れになりました。
二次創作週の直前で「やはりオリジナルで統一した方がいいかもしれない」と気がつき、二次創作週は無くなりました。
理由は色々ありますが、一番は「グッズ化などをしたときに頒布しにくくなる可能性があるため」です。
(例えばオリジナルのイベントに出展する際、規約の関係で二次創作部分のみ省かなければならない可能性などがあります)
二次創作企画は別の機会に行う予定です。
週ごとのテーマとは別に、各話個別のお題も設定しました。
画像版の小説では左下に、甘翼掲載版の小説では作品最下部「tarot」の部分に、お題が書かれています。
このお題はタロットカードで占って決めました。
最近購入したタロットカードを使ってみたかったこと、占いの経験を積みたかったことが、タロットカードをお題に選んだ理由です。
企画概要
以下は本企画の概要(ルール)です。
基本ルール
- 十月は毎日小説と絵を一作ずつ制作する。
- ただし絵は小説を投稿した翌日に制作する。
- 最終日のみ、当日の小説分の絵も描く。
文字数
- 小説は一枚のはがきに収まる文字数にする(今回の組版では六百字前後)。
テーマ
- 小説は各週にテーマを設定し、それに沿った物語を書く。
- 絵のテーマは「漫画の一コマ」。
各週テーマ
- 第一週:ほのぼの
- 第二週:シリアス
- 第三週:クロスオーバー
- 第四週:特殊シチュエーション
- 第五週:総括
お題
- 週のテーマとは別に各話ごとのお題がある。
- お題はタロットカードで占って決める。
- ただし最終日のみ恣意的にタロットカードを選択した。オチを付けるため。
お題占い方法
- 三列三行計九枚タロットカードを配置する。
- 縦横斜めのいずれかの並びから三枚を選び、お題とする。
- 九枚の中から自由に三枚選んでも良いが、なるべく行ごとに選ぶ。
- お題占い以外で出たカードをお題にしても良い。その場合もお題とするカードは三枚選ぶ。
大テーマ
- 原則秋にまつわる話を書く。
- 「秋と言えばな出来事である」「投稿日と同日、または同じ時期に起きた出来事である」のいずれかを「秋にまつわる」と定義する。
感想
まず、とにかく楽しかった!という気持ちでいっぱいです。
自作品のいろんな話が読めてうれしかったです。
一部のお話は本編に深みを与えるような内容になっていたので、作品に対する想いがさらに深まりました。
感情的な充足だけでなく、技術的な充足もありました。
毎日小説を書くことで小説執筆の鍛錬になりました。
やっぱり毎日取り組むことは一番の修行になります。
限られた文字数の中で執筆することで、表現の取捨選択や文章の短縮化の訓練にもなりました。
小説のみならず、絵の制作も鍛錬になりました。
私は線画のある絵や漫画(に適した絵)を描くのが技術的に苦手だったのですが、毎日描くことで大分慣れました。
線画の描き方やコントラストを上げる描き込み方のコツをつかめました。
実際の漫画だった場合を想定して、コマの中にキャラや吹き出しをどう配置するか、考える訓練にもなりました。
また、前から甘翼作品の一コマ漫画を描いてみたいと思っていたので、その目標も達成できました。
「いろんなことが達成できた」というのが全体的な感想です。
反省
「いろんなことが達成できた」反面、「いろんなことが達成できなかった」という思いもあります。
毎日投稿する関係で、小説の表現はあまり煮詰めることができませんでした。
文章短縮のためにやりたかったネタを削ったのも無念です。
本企画は他の作業時間を圧迫しないように計画を立てたつもりでした。
しかし一日の内企画に充てる時間は予想以上に多かったです。
特におまけ絵は小説の二倍、制作時間がかかっていました。
やったことには後悔していませんが、見切り発車だったことは反省すべき点の一つです。
作業時間の短縮には努めていました。
ただその努力は作業段階ではなく、そもそもの計画段階でするべきことでした。
今回は一ヶ月という比較的短い期間で終わると確定していたので、ある程度ライブ感で進めても企画は成功しました。
長期的な企画の場合は、もっと計画を煮詰めるべきです。
(もちろん短期的企画でも前もって企画するに越したことはありません。できれば一ヶ月前から計画を立てたいところです)
作業効率化にはまだ詰められる点があります。
詳細は後述しますが、作業効率化のための具体的な取り組みは以下の通りです。
- 文章のフォーマット化
- 半自動変換環境の構築
- 作業のルーティン化
これらの施策は効果的に作用しました。
ただ手動作業が間に挟まるため、時折ミスがありました。
またこれらの施策は企画開始後に取り入れたものもあり、施策適用前のミスも目立ちます。
これも計画不足と言えるでしょう。
技術以外の面では、「キャラの視点が偏ったこと」に少し思うところがあります。
私はなるべく全てのキャラに対し平等に接していたいと思っています。
各々付き合い方に違いはあれど、熱量だけは平等でいたいとも思っています。
ただ今回、小説の登場回数と「小説の一人称視点を担当した回数」に偏りが生まれてしまいました。
(ある意味ではこれも計画不足です)
ただこれは半ば仕方がないことなのかなとも思います。
例えばとな天は主要キャラが多い分作品単位の登場回数が増えますし、主人公格である九十・黒井とそれ以外のキャラクターで露出度が変わるのも自然といえば自然です。
このあたりのバランスの取り方はもっと練っておきたいです。
一人称視点を担当した回数は、キャラの扱いへの偏りとは別に、自分が得意・苦手な視点の作風という解釈をすることも可能です。
例えば佐久真や安藤は語彙傾向が一般的で、(心の声の)口調も標準的なので、私にとっては書きやすい部類です。
逆に伊方や黒永はあまり語彙が無いという設定があり、口調も標準からはズレ気味のため、私にとっては書きにくい部類です。
この分析を元に、苦手な部分を補うことや、新しい作風に変えることも可能でしょう。
反省点は少なくありませんが、それは得た物が多いということと同義です。
この経験を生かし、さらに自分の糧にしていきます。
小説の組版について
組版にはViviliostyleを使用しました。
vivliostyleとは、HTML・CSSを用いて組版をする組版システムの一種です。
無料で使えます。
詳しい解説は以下の記事をご参照ください。
フォントには「はれのそら明朝」を使用しました。
ただし一部記号の表示が縦書きにそぐわなかったため、一部記号には源暎こぶり明朝を使用しました。
PDFの画像化にはCLIP STUDIO PAINT(以下クリスタ)を使用しました。
クリスタにはPROとEXの二種類のバージョン※があり、EXではPDFの入出力が可能です。
※厳密に言うと他にもバージョンはありますが、大別するとこの二種類になります。
かつては外部プラグインでしかPDFの入出力はできなかったのですが、今は標準機能になりました。
クリスタはイラスト制作ソフトなので、様々な形式の画像で書き出せます。
そのためPDFの画像変換ソフトとしても重宝しています。
PDFの画像化は無料のWebツールなどでも行えます。
ただ機能制限がある場合が多いので、私はクリスタを使用してPDFの画像化をすることが多いです。
単純にクリスタを使い慣れていることも使用理由の一つです。
効率化について
前述の通り、作業効率化の具体的施策は主に以下の三つを行いました。
- 文章のフォーマット化
- 半自動変換環境の構築
- 作業のルーティン化
文章のフォーマット化
実際のテキストデータです。
## おごりがい
{info <2024/10/01> <とな天>}
店内にいるのは、チャーハンをかき込むサラリーマンや酒をあおる老人。店に入るとき、煙草の匂いがした。店の中央の席を陣取る学生服のおれたちは浮いていた。
「ほら、好きなだけ頼め」利田先輩からメニューを手渡される。
九十とメニューを見る。ザ・町中華なメニューだ。九十は顔を上げる。
「ほんとにいいの、全部おごりで」
「普段の礼だ。たまには返させろ」
二人でメニューを決めて先輩に伝える。先輩は下唇を突き出したが、店員を呼んで注文をした。先輩はすでにメニューを決めていたようだ。常連なのだろう。
「ツクモ、もっと食えよ、育ち盛りだろ」
九十はオムライスのハーフを頼んだ。九十は申し訳なさそうだ。
「俺あんまり食べれなくて、先生にも食べ過ぎるなって言われてて{genei <……>}。それに金星くんに悪いし」
「ったく。西を見習え」
おれはハーフメニューを四つほど頼んだ。ハーフとはいえ、元の量が多いことは先輩から聞いていた。食べ応えがありそうだ。
「あ、でも」とおれは口を吐く。「おごりは一品でいいです」
「はあ? 金持ってんのか」
「転生者なので、神様から資金援助してもらってます。だから先輩のおごりは一品分だけいただきます」
先輩は肩を落とし、肘を突いて、眉間に指を当てる。そして大きくため息を吐いた。
「おごりがいのねぇ奴ら」
{tarot <Ace of Wands / The Devil Rx. / 2 of Sword>}
マークダウン形式で記述しています。
フォーマット化された文章形式では、マークダウンが最も使いやすいと感じているためです。
またVivliostyleではマークダウンを使用するため、変換の手間を減らす目的もあります。
{}で囲われた部分は独自フォーマットです。
この部分はVivliostyle用に変換すると以下のようになります。
変換前
{info <2024/10/01> <とな天>}
変換後
<div id="info"><div id="date">2024/10/01</div><div id="cate">とな天</div></div>
Vivliostyleにおいて、マークダウン形式で実装できないデザインはHTML形式で実装します。
ただ小説執筆時にHTML形式で書くと冗長ですし、ミスも発生しやすくなります。
そのため短縮化した形式を使用し、変換ソフトで変換することにしました。
また、ミスの発生を減らすため、テンプレートファイルも作成しました。
以下はテンプレートファイルの内容です。
## title
{info <2024/10/01> <とな天>}
main text
{tarot <card1 / card2 / card3>}
最もミスを防ぐ方法は企画用の執筆ソフトを作って作業の大半を自動化してしまうことだったのですが、時間的に実現不可能だったため、今回は止めました。
代わりに「いかに手動でもミスを減らせるか」ということに主眼を置いて対応策を考えました。
半自動変換環境の構築
執筆した小説データは以下の三つに変換されます。
- Vivliostyle用ファイル
- ツイート投稿画像用ALTファイル(甘翼掲載用ファイル兼用)
- ツイート投稿文章
上記二つは拙作ソフト「SCBS」で、残り一つは今回のために書いた簡単なプログラムで変換しました。
SCBSは主にノベルゲーム向けのシナリオファイルをプログラムに変換するためのソフトです。
以下の記事で紹介しています。
SCBS以外の変換ソフトに関しては以下の記事でご紹介しています。
SCBSは正規表現による置換に対応しています。
例えばVivliostyle用ファイル向けには以下のような変換法則で変換します。
変換前
{info <2024/10/01> <とな天>}
変換定義
置換前
\{info \<(.+)> \<(.+)>\}
置換後
<div id="info"><div id="date">\1</div><div id="cate">\2</div></div>
変換後
<div id="info"><div id="date">2024/10/01</div><div id="cate">とな天</div></div>
ツイート投稿画像用ALTファイルでは、マークダウン形式・独自フォーマット形式での記述を消去するための変換を行いました。
変換前
{info <2024/10/01> <とな天>}
変換定義
置換前
\{[a-z]+\s\<(.+)> \<(.+)>\}
置換後
\1\n\2
変換後
2024/10/01
とな天
ツイート投稿文章用のプログラムは、以下のような仕組みで動いています。
- 定義ファイルを読み込む
- 定義ファイルに従って文字列を抽出する
- テキストファイルに書き出す
今回は「日付」「タイトル」「題材作品名」の順で抽出するように定義しました。
実際に使用した定義ファイル「config.jsonc」です(一部公開用に編集しています)。
{
"folderPath": "", /*ここに変換したいテキストが配置されたフォルダを指定する*/
"filePattern": "10[0-9]{2}\\.md", /*変換対象のファイル名を定義する*/
"extractPatterns": [ /*抽出したい文字列を抽出したい順に記述する*/
"\\{info\\s\\<[0-9]{4}/(.+)>\\s\\<.+>\\}",
"##\\s(.+)",
"\\{info\\s\\<.+>\\s\\<(.+)>\\}"
]
}
実際の出力テキストです。
10/01 おごりがい とな天
10/02 ケーキ 愛まほ
10/03 悪魔のささやき 悪たし
10/04 捨てられない とな天
10/05 意外な要望 悪たし
10/06 赦し 愛まほ
10/07 家を燃やして とな天
10/08 人間のふり 悪たし
10/09 エゴの献身 とな天
10/10 死の選択肢 愛まほ
10/11 悪魔の墓参り 悪たし
10/12 天使の墓参り とな天
10/13 マニアの中のマニア とな天・悪たし
10/14 悪魔的ゲーセン とな天・悪たし
10/15 勇気と男気 とな天・悪たし
10/16 誘惑 愛まほ・悪たし
10/17 生者たちの答え とな天・愛まほ
10/18 一手違えば とな天・愛まほ
10/19 人生ゲーム とな天・愛まほ・悪たし
10/20 未来の過去の人 とな天
10/21 使わざるべき才能 悪たし
10/22 約束しよう 悪たし
10/23 夢からの贈り物 とな天
10/24 支配 愛まほ
10/25 純粋な とな天
10/26 純粋に とな天
10/27 幸福を願う とな天
10/28 不安の影 とな天
10/29 また会う日まで 愛まほ
10/30 特別な日 悪たし
10/31 ハロウィン とな天
とりあえず最低限動くものをとプログラミングしたので、正直粗だらけです。
例えば出力テキストは「 」(全角空白)で区切られていますが、「抽出した文字列後方に全角空白を結合する」という雑な設計なので行終わりに余分な全角空白があります。
今思えば、抽出テキストを配列化してからjoin()で結合するのがベストプラクティスでした。join()なら区切り文字を設定した上で文字列を結合できるからです。
join()への理解が浅かったため今回は取り入れませんでしたが、今後は取り入れたいです。
作業のルーティン化
他二つより地味ですが、地味ながら大事な施策でした。
小説と絵を制作してから投稿するまでの流れはほぼルーティン化していました。
ざっくりとした流れは以下の通りです。
- 小説を書く
- 変換しVivliostyleに組み込む
- 校正(都度変換→組み込み)
- PDF化・画像化
- ALT用文章・ツイート用文章変換
- 予約投稿
- おまけ絵を描く
- 予約投稿
私の悪癖として、「何をやればいいかわからないことに不安を感じると行動できなくなる」というものがあります。
これを避けるために、あらかじめ日々やるべきことをテンプレ化しました。
そのため迷いなく行動できました
またルーティン化はサボり防止にも繋がります。
長期的計画の大敵はモチベーションです。
行動がモチベーションに左右されると、やる気がある日とやる気がない日、すなわち行動する日と行動しない日のバランスが自分で取りづらく、計画進行に支障が出ます。
歯磨きや入浴など、習慣的な行動がモチベーションに左右される人は少ないと思います(歯磨きや入浴が嫌いな人でも、別の習慣があると思います)。
作業を「やる気があるときにするもの」から「歯磨きや入浴のような『習慣』」にすることで、モチベーションに左右されずに行動できるようになります。
各週語り
ここからは制作した小説・絵に関する振り返りをします。
まずは各週ごとの振り返りです。
第一週
ほのぼの週です。
もしかしてご飯の話だけで一週使えるのでは?と思った週でした。
ご飯の話が好きです。
第一週以降は真面目なお話が多かったので、もっとほのぼのしたお話を書きたかった気持ちもあります。
第二週
シリアス週です。
性質上本編のその後を書いたりや補足をしたりする話が多く、短いながら読んでいて充足感があります。
七話中四話が人の死にまつわる話なので、いっそ死の週としてもよかったかな?とも思います。
でも第二週なのに死(四)なのはミスマッチかもしれません。
第三週
クロスオーバー週です。
甘翼作品同士のクロスオーバーは一度はやってみたかったので、念願が叶ってうれしいです。
普段関わらない人間と関わることで、キャラの新たな一面が見られました。
「もしこの人物がこの世界にいたら……」と妄想するのも楽しかったです。
第四週
特殊シチュエーション週です。
ヤンデレ化や子ども化など、クロスオーバー以外の特殊なシチュエーションがテーマです。
特殊なシチュエーションは、特殊な設定に引っ張られて原作やキャラの設定が薄まるという短所があります。
でも今回は原作やキャラの設定を生かした話作りができたのではないでしょうか。
ただ、特殊なシチュエーションを思いつくのが難しかったです。普段書かない分野なので単純に知識がありません。
今思うとハロウィンにちなんでヴァンパイアネタをやればよかったです。また機会があれば書きたいですね。
第五週
総括週です。
風呂敷をたたむような週を目指しました。
本企画の小説はある意味、小話の詰め合わせのようなものです。
なので最後まで小話を続けることも考えましたが、今回は企画の区切りとしてちゃんと終わらせたい気持ちを優先しました。
第五週の話は全て「未来」にまつわる話です。
本企画で生まれた小説には、以下の裏テーマを感じました。
- 本編の未来の話
- あったかもしれない未来の話
- 新たな一面
各作品(とな天・愛まほ・悪たし)がどの裏テーマを最も象徴としているかを考え、それぞれの裏テーマにオチを付けるつもりでお話を書きました。
個人的には、とな天が「あったかもしれない未来の話」、愛まほが「本編の未来の話」、悪たしが「新たな一面」を象徴していると感じました。
意図していなかったことですが、キャラクターたちの本音にまつわる話にもなりました。
私はそれぞれの作品の作者ではありますが、キャラクターたちの本音を書いていて・読んでいてドキドキしていました。
キャラクターを身近に感じられるような臨場感があったのかもしれません。
各話語り
10/01
ここから三日間は食欲の秋がテーマでした。
まだ文字数に余裕のあった頃ですね。組版した画像の余白が多いです。うらやましい……。
このお話を書いたとき「黒井・令城ならどう断るか?」と考えたことで、おまけ絵のアイデアが生まれました。
10/02
これだけ生存IFのお話ですね。
もっと生存IFの話があるかと思っていたのですが、案外無かったです。
もっとあるかと思って投稿文に注釈を入れたのですが、結果的に注釈が入っているのはこれと十一日だけでした。
十一日の注釈は無くてよかった気がします。
まだおまけイラストの絵が初々しいです。
漫画風イラストのコツがまだつかめていませんでした。
これはこれでギャグタッチな感じが好きです。
10/03
安藤で食(欲)にまつわるお話を書くなら夜食がテーマだろうな、という発想から生まれたお話です。
ほぼご飯の描写ですね。若干飯テロ。個人的に読むとラーメンが食べたくなります。
おまけ絵のネタは気に入ってます。
原作の題材が普遍的だといろいろなネタを使えて良いですね(それこそ悪魔のささやきとか)。
10/04
さすがにご飯の話で一週使うわけには……と思い、最初に考えていたものとは別のお話を急遽考えました。
大掃除のアイデアはタロットカードを見てふと思いつきました。
タロットを上手くお題に使えたお話でしたね。
なにげに九十の私服は珍しい気がします。
とな天はゲームの仕様上私服姿が存在しないので、他二作と違って私服姿がわかりづらいんですよね。
一応ゲーム外イラストや小説では時折、私服の描写があります。
どこかのタイミングで主要キャラの私服姿を描きたいですね。
10/05
読書の秋です。
安藤はいつも本を読んでいるので、黒永にとっての本の話にしました。
黒永はこの後安藤に子ども用図鑑を買ってもらったという裏話があります。
(黒永は写真集など見て楽しめる本は好きです)
この裏話をおまけ絵にしようかとも思ったのですが、一コマの中でオチが付くアイデアが生まれなかったので止めました。
おまけ絵の「汚い黒永の字」がお気に入りです。
キャラの字の癖を考えるのも面白そうです。
10/06
好きなお話ですが、この企画でやるには少々文字数不足だったと思います。
初稿からかなり描写を削りました。
削った文章の中に「田舎の警察にとって死者蘇生は前代未聞の大事件だった」というものがあります。
本編にもある通り蘇生魔法は実質使用不可能な魔法です。
事例の無い捜査に警察は慌てふためいている、という裏設定があります。
おまけ絵はかなり気に入っています。
伊方の切迫感が伝わってくる感じが好きです。
10/07
タロットカードを見てすぐ「これは黒井と令城のカードだな」と直感しました。
私は喪失、幼稚、家族の難と解釈しました。
黒井と利田や黒井と令城という組み合わせも考えてみましたが、一番しっくりきたのはやはり黒井と令城の組み合わせでした。
書き出しが好きです。
「家を燃やそう」は、程度の差はあれ、一度は考えたことがある人も少なくないと思います。
ハッとするような文章が書けたと、ちょっと自画自賛してます。
10/08
週初めの時点で十一日のお話――二人の関係性の終着点というテーマが決まっていました。
安藤と黒永の過去を踏まえた上で、二人がどういう関係性を築けたのかを書きたいと思い、この話を思いつきました。
過去の話なので、まだ二人の関係はいびつです。
漫画っぽい表現ができたおまけ絵です。
なにげに生前の黒永の絵は初登場ですね。
二人の過去編小説はいつか書きたいです(もちろんとな天や愛まほも)。
10/09
実は最初、第一週のテーマは「食(欲の秋)」でした。
これはその名残です。
第一週用に考えたお話で、テーマ変更後にここに移りました。
最初、令城は本当にカビたパンを食べてる設定でした。
ただ「かびたパンを食べるとどうなるのか」調べた結果、最悪の場合死に至るが基本はすごく苦しむのみ、という印象を抱きました。
死なずに苦しむことを許容するのは令城らしくないと思ったので、この設定は無しにしました。
(食べたら死ぬ可能性の方が高いのであれば、かびたパンを食べるのも令城らしいかもしれません。それでも九十との約束があるので食べない寄りかも)。
「さすがの令城もかびたパンは食べない」ことを示すため、おまけ絵は本編の台詞をフォローする内容になりました。
10/10
企画の裏テーマを如実に表したお話の一つです。
「一度人を殺したら人生の中で殺すことが選択肢に入る」、という話は有名です。
希死念慮も同じではないか、と考えたことがお話を思いついたきっかけです。
愛まほED3は「それでも死ななかった結末」です。
なのでその結末を裏切る内容にはしないよう気をつけました。
二十九日でも書きましたが、佐久真はこれからも生きていけるはずです。
10/11
墓参りのお話その一です。
少し前に墓参りの作品だけを取り扱うWebイベントが開催されており、そのイベントを知ってから「墓参りとは」と度々考えるようになりました。
このお話はその回答の一つです。
当初おまけ絵は「墓の値段を見る安藤と守理」の予定でした。
内容は以下の通りです。
守理「いっそ千万くらいの豪華なお墓にしましょうか」
安藤「やめて、父さんも望んでないよ」
安藤の声が大口に届いたらうれしいと思い、そちらをおまけ絵にしたため、墓の値段を見る安藤は没になりました。
10/12
墓参りのお話その二です。
黒井と令城の行き先をナチュラルに地獄だと思っている利田が好きです。
実際二人が天国に行くと思う人はあまりいないとは思います。
ただ利田はそこで「二人は天国にいる」と言うタイプではない、というのが現れていて、キャラクターらしさを感じます。
こういう地味にキャラらしさが出ている表現が好きです。
本企画におけるとな天の物語は、ほぼ全て「ED2で黒井たちの計画が失敗した世界線」を想定して書いています※。
※それ以外の世界線でも成り立つよう書いている場合もあります。
とな天の構成の都合上、十月以降の五人の話が書きづらく、十月以降の話を書くためには本編に無い世界線を参照しなければならないためです。
その中で、この十二日のお話はED3の世界線であることが明確になっています。
世界線が本編のED後であるのが明確なのは、このお話と七日のお話のみです。
愛まほ・悪たしもそうですが、過去の話のみならず、未来の話ももっと充実させたいですね。
ただとな天の未来の話(特にED1・ED2のその後)は、作品化すると長編になりそうなので、しばらく生まれないと思います。
いつか作品として見てみたいですね。作るのは私ですが。
10/13
「オタク同士の会話」って感じで好きです。
この二人は性格が似ています。
その中でも「自分が興味のある分野の話題が普段近しい人には伝わらない(からこそ話が伝わるとテンションが上がる)部分」にフォーカスしてみました。
話が通じる友達ができた二人の興奮に何度読んでもニヤニヤします。
おまけ絵では、なにげに魂だけの存在になった黒永の姿が初登場しました。
透けた体を表現するのが難しかったです。
おそらく背景があった方が表現しやすかったと思います(今回はなるべく省力化したかったので、背景は描かないと決めていました)。
10/14
これも書き出しが好きです。
読んだ瞬間「悪魔のゲームセンターってなんだ?」と引きつけられます。
それでいて定番の設定を土台にしているので、設定の飲み込みも早くて済みます。
良い書き出しができたと自画自賛してます。
「動」で振り回す黒永と「静」で振り回す西の凸凹コンビ感もいいですね。
この二人の組み合わせをもっと見たいです。
ところで「詰んだか……?」と言っている西ですが、一日のお話の通り神様から金銭的支援を受けているので、(金銭という点では)実はそこまで詰んでなかったりします。
ただできる限り支援は受けないように努めています。
理由は単純で、神様に申し訳ないからです。
本人の性格的にチート的な手法が苦手なのも忌避する理由の一つです。
なので西はお金について現実的な金銭感覚で考えることがほとんどです。
10/15
タロットカードの並びを見たとき、「皇帝」を利田、「世界」を安藤に見立てて、「ワンドの1」、つまり「勇気」の話を書くことを思いつきました。
この二人の共通点は勇気だと私は思っています。
でも二人の勇気は同じものではなく、ならばどう違うのかをテーマにしたいと思いました。
おまけ絵のネタを書く際、二人の年齢を確認したのですが、そこで安藤の生まれ年を設定し間違えていたことに気がつきました。
この話の時点で二十歳になっているはずが、設定上の生まれだと十九歳になってしまうことが判明したのです。
設定は未公開だったのでこっそり直しておきました。
今となっては笑い話です。
ちなみに二人は同い年ですが、安藤は早生まれなので利田より一学年先輩です。
「利田が安藤に敬語+先輩呼びで接し、安藤が恐れおののく」という案もありました。
どちらかといえば同い年であることをネタにしたかったこと、このタイミングで二人がお互いの学年を知ることは無いと考えたことから、今回は見送りました。
10/16
第一週の時点で思いついていたアイデアでしたが、週ごとにテーマがある仕様上このタイミングで書くことになりました。
「黒永の誘惑に乗りそうになる佐久真」という案もありました。
しかしこの話はED3後を想定しており、ED3の佐久真は誘惑に乗らないだろうと判断したため、没になりました。
唯一他のおまけ絵と構図がかぶってしまった日です。無意識でした。
十四日の絵と構図が被ったのですが、十四日も十六日も「振り回された黒永が疑問に思うシーン」なので、ある意味被ってよかったのかもしれません。
むしろ三十一個ある中で、(意図的なものを除いて)構図かぶりがほとんど無かったのはすごいです。ちょっとびっくり。
構図って思っているより色々ありますね。
もっと構図について勉強したくなりました。
10/17
タロットカードを見て、「ソードのペイジ」を伊方、「カップのキング」を九十に見立て、「すでに答えを出した九十がまだ答えの無い伊方を導く話」を書こうと思いつきました。
とな天っぽい話だなあと思います。
九十が人生観や死生観を語っているととな天っぽくなりますね。
かなり難産だったのですが、結果的に良い感じに話がまとまったのでよかったです。
実は今、伊方を含めた愛まほのED後のお話を書いています。
ED1の世界線の話の中で、伊方は道を踏み外したような選択をしてしまいます。
もし九十に出会えていたら、選択を間違えることは無かったかもしれません。
ただ二人の世界が交わることは(公式作品としては)ありません。
十七日と十八日のお話を読むと、「あのときこの人のためにあの人がいてくれたら」と思わずにはいられません。
10/18
黒井と佐久真は、性格診断の理論によっては同じ性格タイプになります(少なくとも作者はそう思っています)。
その設定を踏まえたお話です。
世界観は愛まほ側に寄せています。
この世界の黒井も感情視認能力を持っています。感情視認能力は常時発生するタイプの魔法です。
ただその魔法が強力すぎて、魔法に敏感な体質になってしまいました。
この体質は、非常にひねくれた言い方すると「ただ敏感なだけ」なので、病気とは認定されていません。
この世界線の黒井は、この体質のことを父に責められたり、「病気ではないのだから頑張れるはず」と叱咤されたりしていました。
体質や環境は異なる二人ですが、抽象的な人生のテーマは似通っていることに気がついたお話でした。
10/19
それぞれ苦労しているんだなあというお話です。
セピア色の人生ゲームは甘翼作品の比喩です。
「甘翼作品を甘翼キャラクターが遊んだら」というのがこのお話の裏テーマです。
おまけ絵では「九十が他プレイヤーのコマを犠牲に勝利した」と書かれていますが、もちろん九十の本意ではありません。
「死か他プレイヤーを犠牲にするか選ぶマス」を踏んだ九十に、他二人が「生きてればなんとかなる、俺らの屍を超えていけ」とアドバイスした、という経緯があります。
このお話を書くときに、主人公の一人称が全員俺であることに気がつきました。
実は新作(予定)の主人公も一人称が俺です。
いっそ甘翼男主人公は俺で統一してしまおうか……?と思っています。
これも今回気がついたのですが、主人公たちが集まる話を書くと、書き分けがめちゃくちゃ大変でした。
新作主人公が加わったらさらに大変になりますね。今から恐々としてます。
10/20
「未来の令城は九十に殺されてこの世界に転移した」「一度死んでいるので言動が達観気味になっている」という裏設定があります。
二十日のおまけ絵も気に入っています。構図が好きです。
最終日の絵を除くと唯一吹き出しがありませんが、吹き出し無しでも漫画っぽい表現ができたのでうれしいです。
擬音を書くのが楽しかったのですが、この絵以外では全然擬音を書かなかった(書けなかった)ので、今後はもっと書いてみたいです。
10/21
子ども化、夢オチ、IF・転移、世界観クロスオーバーときて、「もう思いつく特殊シチュなんてない!」という状態からひねり出したアイデア、それがヤンデレ化です。
でも今考えると定番ネタですね。
キャラ性を根本から変えるネタはキャラ崩壊に繋がりがちですが、今回は安藤らしさを生かせたと思います。
ヤンデレ安藤を戻そうとする黒永は意外かもしれません。
安藤が依存してくれるならむしろ喜びそうにも思えます。
理由としては、「交渉材料に絶交をちらつかされるのはシンプルに嫌」「本意では無いとはいえ絶交(という自分が一番嫌がること)をネタに安易に脅迫する安藤は解釈違い」などが挙げられます。
とはいえヤンデレ安藤もそう安易に絶交は持ち出さないとは思います。
普通の安藤より判断が冷酷なだけで、絶交詐欺ジャンキーというわけではないです。
10/22
ここまでで黒永視点の話が前話のみだったため、数調整のため・黒永視点にも挑戦するため、黒永視点にしました。
安堂視点から書いた方が状況説明は簡単だったのですが、黒永視点から書くことで臨場感が上がった気がします。
視点を黒永にしたのは結果的に良い判断だったかもしれません。
安藤の最後の台詞が本編の黒永の台詞のアンサーになっているのが好きです。
この展開を思いついたときはめちゃくちゃニヤニヤしてました。
ちなみに黒永は今も九九が言えません。
(まったく言えなくはないかもしれませんが、必ずどこかで思考が止まります)
10/23
朝食の話が好きです。隙あらば朝食の話を書いてしまいます。
黒井に至っては朝食の話は二度目です(一度目は『まいにちを君と共に。』)。
ただ実際、黒井が望んでいるのはこういう朝食の時間なのだとも思います。
黒井にとって食事とは、父との時間であり、孤独の時間です。修行で、緊迫で、義務で、早く終わらせたいものです。
その対極にあるのが「穏やかな朝食」です。
人生の呪縛の象徴の一つが食事であり、人生の願望の象徴でもあります。
「穏やかな朝食の時間を得られた世界もある」という希望を表したかったお話、……なのですが、よくよく考えると残酷な仕打ちですね。
だとすると黒井はそうさせた神を恨んでいるだろうなあ、と思っておまけ絵を描きました。
10/24
最初のアイデアからかなり設定を削ったお話です。
悪たしの世界観を愛まほに取り入れたら、というシチュエーションです。
当初は「悪魔伊方を生み出しているのは本当は佐久真であり、自分で自分を騙している」という設定でした。
「設定の描写が文字数に収まらなかったこと」「佐久真は悪魔を生み出すほど伊方(の死)に執着するか?と疑問に思ったこと」から、この設定は白紙になりました。
佐久真が悪魔を生み出す世界線も無くは無いのですが、かなり精神状態が悪いときだけです。
おまけ絵はかなりお気に入りです。
死者の声に苦しむという点で六日の話と対になると考え、おまけ絵も対になるようにしてみました。
こうしてみると二十四日の方が描き込みの密度が上がってますね。
上達を感じます。うれしい。
10/25・10/26
黒井と利田は対になる物語を書きがちですね。本編おまけしかり、短く永くしかり。
自分でも不思議です。
二人は真逆の性格タイプというわけでもなければ似たもの同士でもなく、対という感じはあまりしません。
しいて言えば「本能で振る舞うと上手くいかない者同士」です。
黒井は後ろ向きな考え方をしたり我慢したりして、不満をため込んで爆発しがちです。
利田はまっすぐ過ぎる性格が故にネガティブな考え方を理解できず、他者の地雷を踏みがちです。
ある意味子どもっぽい欠点であり、そういう欠点に折り合いを付ければ上手く関係であり、本来二人はそうあれるようお互いの素質を引き出し合える関係です。
そのことにもっと早く気がつけば、本編の二人はこじれなかったのかもしれません。
ところで欠点に折り合いを付けることは大人になることとも言えますが、二十五・二十六日の「純粋」というテーマとは一見矛盾しています。
二人を縛っているのは本能的な執着であって、純粋さではありません。
黒井は「自分は間違っていない、我慢してやっている」と思っていて、利田は「自分は間違っていない、正直に言わない方が悪い」と思っています。あるいはそう考える癖があります。
これは人間が生まれながらに持っている認識の歪みとも言えます。
これを手放すことが二人にとって純粋になること(純粋な視界を持つこと)だとすれば、矛盾はありません。
10/27・10/28
黒井・令城の本音のお話であり、九十・利田の決意のお話です。
個人的に「夕方は本音が漏れる時間」という感覚があります。
その感覚を文章で伝えられるよう表現を考えてみました。
二十七~三十日はかなり観念的なお話になりました。
正直テーマが伝わっているかどうか不安です。
この話を書く直前に「新プロジェクトX」というテレビ番組を見ました。
オウム真理教の事件で活躍した科捜研のお話で、具体的な言葉を提示せずに裏にあるテーマを感じさせるような作りになっていることに感銘を受けました。
二十七~三十日の話は、番組で得た感動を自分でも作ってみたくて書きました。
上手く書けたかはともかく、実際に書いてみてよかったです。
実践したからこそわかる難しさや、テーマを隠す面白さ、自分が創作の目標の一つにしている「ドキュメンタリーのようなフィクション」に一歩近づいた手応えなど、色々な感情を味わえました。
またこういうお話を書いてみたいです。
おまけ絵は、白黒(+グレー)だけで夕焼けのまぶしさを表現することに挑戦しました。
難しかったです。この表現は一朝一夕でできるものではなく、漫画家のようなその道のプロですら苦心して描くようなものだと思います。
とはいえ、小説と同じ理由で挑戦してよかったと思っています。
10/29
実質十日のお話の続編です。
お話の趣旨はED3と同じです。
ただ「死なないという決意」を、一時的な発想ではなく、生涯の考え方にするきっかけにとなった出来事と言う点で、ED3とは異なります。
ED3の佐久真がその後どういう人生を送るのかは、以前からざっくりと考えていました。
ただ十日・二十九日のお話で「煙草を持ち歩く佐久真」の概念が生まれたことで、これからの佐久真の人生で煙草が大きな意味を持つようになりました。
二つのお話は自分にとっての佐久真旭像が深まったきっかけでもあります。
死後の世界があるとしても、佐久真と伊方が出会うのはずっとずっと先になるでしょう。
でもいつか会えたらいいですね。
10/30
ハロウィン前日のお話です。
書籍版の悪たしはハッピーエンドで終わり、おそらくその後大きな事件などもありません。
なので比較的平和な話になりました。
安藤は元来イベントごとが好きな性質ですが、環境によって抑圧されていました。
その性質を自然に発露できるようになったんだなあと思うとうれしくなります。
元々この話は、「実はイベントごとが好きな安藤」と「実は最近賢くなっていた黒永※」が、お互いの知らない一面を知り、これからの生活に胸が膨らむ、という筋書きでした。
※漢字ドリルなどを安藤に買ってもらって勉強しています。五日のお話を踏まえた設定です。商店街にあるなんらかの漢字を黒永が読めた、というシーンを入れる予定でした。
単純に話がはがき一枚に収まり切らなそうだったので、元々予定していた筋書きは大幅に削りました。
結果的に描写とテーマがすっきりしたので、これはこれでよかったかもしれません。
元の筋書きで書くなら文字数は二倍以上になると想定した方が良いと思います。
10/31
ハロウィンのお話です。やっぱり十月といえばハロウィンですよね。
この企画の締めになるような話を考えた結果、「主人公三人が平和で過ごすこと、最後に未来への希望を持つことで、各作品の未来が平和であることを願うようなお話」に決めました。
元々怪物ばかりのハロウィンというネタは、第四週(特殊シチュエーション週)のために思いついたアイデアでした。
そのときは話のオチが思いつかず没になりましたが、ここで再利用されました。
オチにちょっと悩みました。
九十が準優勝になり、優勝者は怪物ならではのトンデモ手法で優勝をかっさらった、というネタはできていました。
ただ具体的にどう優勝したのかがなかなか思いつきませんでした。
どのタイミングで思いついたのかは自分でもよくわかっていませんが、大体以下のような流れだったと思います。
- 最近視聴している「仮面ライダーガヴ」がお菓子をモチーフにしていることを思い出した。
- それがどういうわけか「お菓子の世界」という発想になる。
- 「お菓子の世界があったら無限にお菓子を持ってこられそう」と思う。
- 3の発想と「ルールの少ない状況を逆手にとって『それってありかよ』みたいな商売する人っているよなあ」という発想が組み合わさる。
- 今のオチが生まれる。
発端になった仮面ライダーガヴはむしろこんなお菓子の世界とは無縁の物語なのがちょっと面白いです。
おまけ絵は「九十が貰ったおもしろお菓子特集」というネタもありました。
ただおもしろお菓子ネタが「食べると体が発光して三日間収まらない」しか無かったので止めました。
ちょっと定番ネタすぎますし、せっかく最終日っぽいお話でついたオチが急に緩んで締まらなくなっちゃいます。
九十は来年優勝できるのでしょうか?
あとがき
本企画のおかげで充実した十月を過ごせました。
きっかけになった世辞涼さんに感謝申し上げます。
また、本企画を見てくださった方にも感謝申し上げます。
あなたの心が少しでも揺さぶられるものであったなら幸いです。
来年も何か企画をしたいですね。